(27日、第106回全国高校野球選手権群馬大会決勝 健大高崎5―1前橋商) 春の選抜を制した健大高崎が、重い扉をこじあけた。 4点リードで迎えた九回2死二塁の守り。カウント2―2。打者のバットは空を切り、主将で捕手の箱山遥人(3年)のミッ…

 (27日、第106回全国高校野球選手権群馬大会決勝 健大高崎5―1前橋商)

 春の選抜を制した健大高崎が、重い扉をこじあけた。

 4点リードで迎えた九回2死二塁の守り。カウント2―2。打者のバットは空を切り、主将で捕手の箱山遥人(3年)のミットに、注文通りのツーシームが収まる。その瞬間、マウンドに歓喜の輪ができ、箱山は地面に突っ伏して泣いた。

 「先を見ないで、最後の1球までやりきった。また大舞台に戻って野球ができる」

 重圧から、ようやく解き放たれた。

 相手は昨夏代表の前橋商。一回と五回、ともに箱山の犠飛でしぶとく得たリードを、右腕の石垣元気から左腕の佐藤龍月(りゅうが)への2年生リレーで守り切った。

 夏の甲子園からは9年間遠ざかっていた。優勝候補に挙げられた年も、ことごとく勝ちきれない。箱山は「周りにはあんまり言わないけれど」と前置きしつつ、今大会で背負い続けていたものを明かす。

 「春に日本一になったチームのキャプテンとして、夏も9年甲子園に行けていない中で、『また今年も行けないのか』と言われてしまうプレッシャーもあった。個人としても結果を残さないとプロの道に行けない。周りが思っているよりも、無理していた」

 夏の群馬大会は過去3年間、代表校が入れ替わる混戦だ。この夏も、県内のライバル校は目の色を変えて向かってきた。

 3回戦では1999年に全国制覇を果たした桐生第一に九回表に逆転されたが、その裏に追いつく。延長十一回タイブレークの末に6―5で破った。

 準決勝では2013年に全国制覇した前橋育英に九回裏に6点差を追いつかれた。延長十回タイブレークで1点を勝ち越し、9―8で決勝に進んだ。

 選抜で全国の打者を圧倒した石垣の150キロ超の速球でも、佐藤の切れ味抜群のスライダーでも、簡単に打ち取らせてはくれない。それでも、ここ一番で粘り切り、紙一重の勝負を制してきた。

 今大会序盤、箱山は「(甲子園)春夏連覇は狙っていない」と言っていた。一戦必勝なのだと、チームと自分自身に言い聞かせていたようだった。出場権をつかんだ今だから、こう言える。

 「春夏連覇できる権利があるのは自分たちしかいないので、そこは狙っていかなきゃいけない。春とは別の山を、しっかり登っていきたい」

 2018年の大阪桐蔭以来、史上8校目の春夏連覇へ。挑戦は続く。=上毛新聞敷島(大宮慎次朗)