(27日、第106回全国高校野球選手権茨城大会決勝 つくば秀英3―9霞ケ浦) 「この代なら甲子園に行ける」。新チームになった昨秋、つくば秀英の指揮をとる監督の桜井健(27)の言葉を、明石理紀斗(3年)は最初は信じられなかった。 直前の秋季大…

(27日、第106回全国高校野球選手権茨城大会決勝 つくば秀英3―9霞ケ浦)

 「この代なら甲子園に行ける」。新チームになった昨秋、つくば秀英の指揮をとる監督の桜井健(27)の言葉を、明石理紀斗(3年)は最初は信じられなかった。

 直前の秋季大会で、チームは1回戦負け。明石自身も打線の中軸ながら、思うような結果を残せなかった。周囲から「歴代で最弱」とうわさされることもあった。

 桜井は、高校時代の2015年に、埼玉・花咲徳栄から夏の甲子園に出場した経験を持つ。その桜井が明るく、前向きに話すほど「自信が持てなかった」。

 それでも平日の練習後、教員の仕事を後回しにしてでも自主練習に付き合ってくれる桜井の姿に、「いつか恩を返したい」と思った。

 転機は、春の県大会。準々決勝で霞ケ浦を破りチームは4強に入った。今夏は常総学院や鹿島学園、水戸一に並ぶシード4強の一角に数えられた。初めて、甲子園が「手に届くかもしれない」と思えた。

 自信を手に、明石は打線を牽引(けんいん)。準決勝までの打率は3割6分8厘。初戦、準々決勝は本塁打も放った。

 この日の決勝も一回に中前へチーム初安打を放った。四回もツーストライクに追い込まれてからファウルで粘り、8球目を二塁打に。塁上でベンチに笑顔を向けた。

 「甲子園、どんな場所か立ってみたかったな」。試合後、ベンチ前で泣き崩れる後輩たちを優しく励ました。

 ただ、力を尽くした背番号9の目に涙はなかった。「一つのことを本気でやり抜いたから。監督や仲間に感謝しかない」。胸を張って球場を後にした。(古庄暢)