(27日、第106回全国高校野球選手権福井大会決勝 敦賀気比1―4北陸) 七回裏、初めて迎えた大きなピンチでギアを上げたはずだった。 敦賀気比のエース左腕、竹下海斗投手(3年)は「向かってこいよ」とつぶやき、気迫を込めて直球を投じる。その…

 (27日、第106回全国高校野球選手権福井大会決勝 敦賀気比1―4北陸)

 七回裏、初めて迎えた大きなピンチでギアを上げたはずだった。

 敦賀気比のエース左腕、竹下海斗投手(3年)は「向かってこいよ」とつぶやき、気迫を込めて直球を投じる。そのたびに帽子が脱げ落ちた。だが北陸打線はファウルで粘って牙をむく。この回だけで43球を費やし、3連打を含む4本の長短打で4点を失った。

 六回まで被安打1の好投。相手打者から球の出どころが見えにくい独特の投球フォームで直球とスライダー、チェンジアップを巧みに投げ分け、凡打の山を築いていく。「いつも通り。低めのスライダーは打たれない」と手応えをつかんでいたが、七回だけ、その決め球が高めに浮いた。

 仲間は守備でもり立ててくれた。七回無死一、二塁で、相手が犠打を試みた打球に小林拓斗一塁手(2年)が猛然とチャージし三塁で封殺。八回には野道諒彌中堅手(3年)が鋭い当たりに迷わず飛び込み、地面すれすれで好捕した。好守のたびに、マウンド上から尊敬の念を込めて拍手を送った。

 敗れたが、涙は見せなかった。内に秘めた悔しさは、子どもの頃から夢見るプロの世界で晴らすつもりだ。(安田琢典)