(27日、第106回全国高校野球選手権鹿児島大会決勝 神村学園8―0樟南) 8―0とリードして迎えた九回裏の守り。神村学園の今村拓未投手(3年)は、「勝ちを意識して少し力んでフォームが乱れた」という。先頭から連続四球を出し、次打者には右前…

 (27日、第106回全国高校野球選手権鹿児島大会決勝 神村学園8―0樟南)

 8―0とリードして迎えた九回裏の守り。神村学園の今村拓未投手(3年)は、「勝ちを意識して少し力んでフォームが乱れた」という。先頭から連続四球を出し、次打者には右前に運ばれて無死満塁のピンチに立たされた。

 小田大介監督(41)は守りのタイムを取り、伝令を送った。「自分のボールを(捕手の構える)ゾーンに投げろ」

 冷静さを取り戻した今村投手は、フォームのバランスを意識して体勢を立て直す。3連続奪三振で切り抜け、マウンドで木下夢稀捕手(3年)を抱え上げて喜び合った。

 春の選抜では2試合に登板したが、その後調子を落とし、九州大会ではベンチ入りメンバーから外れた。「3カ月やるから自分で考えて修正してみて」と小田監督から告げられた。鹿児島大会前の練習試合で結果を出せなければ、「ベンチから外す」とも。

 9回を投げきるスタミナをつけようと走り込み、体のキレやバランスを向上させようとダッシュや体幹トレーニングにも取り組んだ。そして、自分の手で背番号1を取り戻した。

 鹿児島商との2回戦ではリリーフとして登板し、相手の反撃を断った。次の鹿屋工戦では先発して3回を無失点。準々決勝の鹿屋中央戦ではコールドとなった七回まで投げて0点に抑えた。満を持して上がった決勝のマウンドだった。

 九回のピンチではベンチから「大人になれ」と声をかけ続けた小田監督。「変化球でストライクを取り、まっすぐをコーナーに投げ切れた」。エースが少し大人になった瞬間を見届けて、「今日だけはほめてやりたい」と目を細めた。(宮田富士男)