(27日、第106回全国高校野球選手権長崎大会準決勝 長崎総大付0―3清峰) 清峰に2点を先制された直後の八回表、長崎総大付の先頭打者の大久保瑛音捕手(3年)は「必ず塁に出る」と決意して打席に入った。 だが、大久保捕手の当たりは三塁ゴロ。懸…

(27日、第106回全国高校野球選手権長崎大会準決勝 長崎総大付0―3清峰)

 清峰に2点を先制された直後の八回表、長崎総大付の先頭打者の大久保瑛音捕手(3年)は「必ず塁に出る」と決意して打席に入った。

 だが、大久保捕手の当たりは三塁ゴロ。懸命に走り、敵失もあって一塁に出た。続く増永伊吹投手(3年)は犠打を決め、大久保捕手を二塁に進めた。「同点、いやいや逆転もいけるぞ」と意気込んだものの、後続は2三振に倒れた。

 2人は強い絆を持つバッテリーだ。大久保捕手は打撃不振に苦しんでいたが、春先の練習試合で結果を出したことから、正捕手に昇格した。大切にしたのはコミュニケーション。試合では、守備から戻ると「打たれた球はコースが甘かった」「こういう配球をすれば良かった」と、ベンチ裏で反省会を開いた。次に練習する際は、2人で課題を点検して、丁寧に克服していった。

 増永投手は「投球で気になる課題があると、大久保はとことんつきあってくれる」。大久保捕手は「増永はここぞという時に頼りになる」と互いを信頼しあう。大久保捕手は自らの考え方も変わったという。「今までは困った時には変化球を使ってきた。増永と話し合うことで、直球をうまく使うコツがつかめた」と話す。

 2人の努力が最も表れたのは24日の準々決勝だ。秋、春、NHK杯の3冠を達成した第1シードの長崎日大を相手に被安打3、5奪三振の好投をみせた増永投手は「あの時は勢いもあったし、自分たちのテンポで試合が出来た。今日もあのテンポで試合を進めたかった」と振り返る。

 この日の試合直後、大久保捕手は「もう増永と一緒に野球をすることはないのか」とたまらなくなり、増永投手に歩み寄った。絞り出した言葉は「今までありがとう」。増永投手は「大久保は今まで支えになってくれた。感謝しかない。チーム全体でみても、勝つ意欲がすごくあるいい仲間だった」と話した。

 渡瀬尚監督は2人について、「コミュニケーションを取る中で、大久保が増永の力を本当にうまく引き出した。協力して実力を高めていったいいバッテリーだと思う。春からみても、様々な強豪校を相手に戦うことで、日に日に成長していった」とたたえた。(天野光一)