(27日、第106回全国高校野球選手権長野大会決勝 長野日大9―0長野俊英) 「2点だけでは足りない」。チームの誰もがそう感じていた。 四回表、打順が長野日大の1番打者で主将の玉井洸成(3年)に巡ってきた。2点をリードし、なお1死一、三塁…

 (27日、第106回全国高校野球選手権長野大会決勝 長野日大9―0長野俊英)

 「2点だけでは足りない」。チームの誰もがそう感じていた。

 四回表、打順が長野日大の1番打者で主将の玉井洸成(3年)に巡ってきた。2点をリードし、なお1死一、三塁の好機。ファウルで粘って甘い球を待った。

 フルカウントからの8球目だった。外角の直球を「何とかついて行って、気持ちで運ぼう」とはじき返した。適時二塁打になり、ベンチに向かって両手を振り上げた。この回一挙4得点。「(相手を)のみ込んでいきたい」と松橋将之監督が話していた通りの、理想的な展開だった。

 長野日大がこの夏まで掲げてきたスローガンは「猛攻堅守」。昨秋から攻撃には定評があったが、課題があった。「(考えず)振り回すだけで攻撃が終わってしまっていた」と玉井は振り返る。好機を作っても1点が遠い。昨秋と今春の県大会は頂点を逃した。要所のしぶとさがチームに欠けていた。

 春からはストライクとボールの見極めを徹底し、状況に応じた攻撃をチーム全体にしみつけた。四回のビッグイニングは、そんな鍛錬の延長線上にあった。さらに、玉井には「外野に飛ばせば1点」という冷静さに加え、「状態は急には上がらない」という、開き直りにも似た楽しむ気持ちがあった。

 実は準決勝までの玉井の打率は2割3分。それが、決勝では3安打2打点と復調を通り越し、優勝の立役者になった。「一番大事な試合で『猛攻堅守』を達成できた」。九回の守備で3アウト目のゴロをさばいて封殺すると、ボールを持った拳を突き上げた。(高億翔)