中日球団初のOB戦開催…黄金期のレジェンドらが彩る ファンのもどかしい思いを代弁した重鎮の苦言に、1万8000余りの拍手が鳴り響いた。中日球団初のOB戦として25日にバンテリンドームで開かれた「DRAGONS CLASSIC LEGEND …

中日球団初のOB戦開催…黄金期のレジェンドらが彩る

 ファンのもどかしい思いを代弁した重鎮の苦言に、1万8000余りの拍手が鳴り響いた。中日球団初のOB戦として25日にバンテリンドームで開かれた「DRAGONS CLASSIC LEGEND GAME2024」。一塁側ベンチの「昇竜チーム」の監督を務めた権藤博さんは、試合後のお立ち台で「ドラゴンズ弱いから、何とかしてやってください」と呼びかけた。往年の名選手が集った夢の一夜は、長らく続く低迷期の“元凶の一端”を再確認させられた。

 当時のように体は動かなくても、面影はやっぱりあのころのまま。投球フォームやバットの構え方、細かな癖……。少々老けたレジェンドたちが楽しそうにグラウンドに立つ姿は、胸躍らせた記憶を呼び起こす。強くても弱くても、いつの時代も、ちょっと個性強めの選手たちが中日にはいた。

 昭和から平成のドラゴンズ史を彩ったかつての名選手ら59人が集う中、ひときわ大きな拍手で迎えられたのは、落合博満監督時代の黄金期を支えたメンバーたち。谷繁元信、山本昌、岩瀬仁紀、荒木雅博、川上憲伸……。まだ比較的記憶に新しいというのもあるが、「強かったドラゴンズ」は色褪せない。

 もちろん、過去の思い出は美化されがちではある。強くても不人気球団だと揶揄されたころもあったし、「暗い」「きつい」など負のイメージが一人歩きしたころもあった。むしろ今は、球団の努力もあって親しみやすさは増した印象が強い。立浪政権の苦闘ばかりに目が奪われがちだが、来場者は増加傾向にある。球団関係者は「女性や子どもなども増えてきて、少しお客さんの層が変わってきた。勝とうが負けようが、ドラゴンズを楽しみに来てもらっている部分も出てきた」と語る。

殻を破り切れないスター候補生…立浪政権3年目は後半戦へ

 Bクラスが続いているとはいえ、状況としては上向いているのは確か。依然として地元政財界の期待値も高い。だが、今のチームに物足りなさを感じるファンは少なくない。一夜限りのOB戦が教えてくれたのは、“スターの存在”。10年安泰の絶対的なレギュラー、全国区の知名度を誇るチームの顔、記憶に残る個性派……。この10年を振り返ると、数えるほどなのかもしれない。

 今だって決していないわけではない。沢村賞左腕・大野雄大が2019年にノーヒットノーランを達成した際に無邪気に飛び跳ねたシーンは、きっと20年後も微笑ましい。苦しむチームをヒットで鼓舞し続けたきた大島洋平は、間違いなく語り継がれるレジェンドのひとり。成長著しい高橋宏斗は近い将来、球界を代表する投手になるかもしれない。

 それでも、まだ物足りない。野手から投手に活路を求めた根尾昂は、プロ6年目を迎えた。将来の大砲候補・石川昂弥は随所で片鱗は見せているものの、怪我もあって殻を破り切れていない。スター候補生がいないわけではないだけに、じれったさは余計に募る。結果を出すのは選手自身だが、導く首脳陣の責務も大きい。目先の結果に目をつぶり、懐深く使い続ける必要も、時にはある。

 中日ファンはしぶとく、懐が深い。先の見えない低迷期からの脱却を、ずっと待っている。立浪政権3年目の後半戦は、首位と8ゲーム差からのスタート。3代目ミスタードラゴンズがつくるチームから、スターが1人でも多く生まれてほしい。そう願わずにはいられない、蒸し暑い名古屋の夜だった。(小西亮 / Ryo Konishi)