(26日、第106回全国高校野球選手権宮崎大会決勝 宮崎商4―3富島) 五回。同点に追いつかれ、なお1死一、三塁のピンチ。「ごめん。任せたぞ」。宮崎商の中村奈一輝(ないき)は、降板する小野壮真からこんな言葉とともにマウンドを託された。 「…

 (26日、第106回全国高校野球選手権宮崎大会決勝 宮崎商4―3富島)

 五回。同点に追いつかれ、なお1死一、三塁のピンチ。「ごめん。任せたぞ」。宮崎商の中村奈一輝(ないき)は、降板する小野壮真からこんな言葉とともにマウンドを託された。

 「絶対に抑えてやる」。四球で1死満塁となったが、140㌔台の直球を主体に押し、佐藤大心を二ゴロ、押川凌駕を右飛に打ち取った。

 数日前の練習中、小野は右手首に打球を受けていた。「力が入らないと言っていた」と中村。この日、先発した上山純平や日高有希也を含め、準決勝まで継投で勝ち上がってきた。そんな仲間から託されたマウンドで燃えないはずはない。ピンチをしのぐと、右腕を大きく振りかざしてガッツポーズを繰り出した。

 九回まで被安打はわずか1。無失点リリーフで頂点に導いた。

 「忘れものを取りにいこう」が合言葉だ。3年前の甲子園は選手らが新型コロナに感染して不戦敗になった。

 「先輩方は試合すら出来なかった」と谷口真主将が言えば、中村も「借りをかえしたい」と話す。

 宮崎大会5試合でチーム防御率は1・40。橋口光朗監督は「中村には『ロング』もあると言ってあった。本当によく投げてくれた」。3年前の悔しさを知るだけに、試合終了直後は涙が止まらなかった。

 令和に入って宮崎勢は甲子園未勝利だ。中村は言う。「宮崎代表として恥ずかしくない試合をしたい。みんなの思いを背負って戦う。まずは勝つことを目指す」。新たな歴史を刻む準備は整った。=サンマリン宮崎(鷹見正之)