(26日、第106回全国高校野球選手権奈良大会準決勝、高田商1―4奈良大付) 奈良大付に2点をリードされた七回裏、高田商のエース仲井颯太(3年)は2死満塁から押し出しで1点を失い、マウンドを降りた。 捕手の北村晟一朗(じょういちろう)(3年…

(26日、第106回全国高校野球選手権奈良大会準決勝、高田商1―4奈良大付)

 奈良大付に2点をリードされた七回裏、高田商のエース仲井颯太(3年)は2死満塁から押し出しで1点を失い、マウンドを降りた。

 捕手の北村晟一朗(じょういちろう)(3年)は「仲井の『絶対抑える』って気持ちに応えられなかった」と悔やんだが、仲井は「最後は四球だったけど、高校一番のピッチングができた試合だった」と胸を張る。

 今大会、仲井はここまで3試合全てで先発し286球を投げていた。2回戦では9回を投げきりノーヒットノーランも達成。「調子は良かったけど、途中でバテてしまった」。万全でなかった足も限界に来ていた。

 昨夏の決勝では5回を投げ6失点。甲子園への思いは人一倍強かった。ただ、昨秋の新チーム発足時はまとまりがなく、「こんなん、秋の県大会は初戦負けや」と不安になったこともあった。

 「困ったときは、周りを見よう」。キャプテンになり、視野を広げようと意識した。「去年は自分一人でやってたけど、今はみんなが笑顔で話しかけてくれてるなって気づけるようになった」。この試合でもピンチの場面で北村らに励まされ、笑い合った。

 試合後、泣きじゃくる北村の背中をなでながら、仲井は口元を結んだ。「『ありがとう』って一言が泣けてきて。甲子園には行けなかったけど、ベンチに入れなかったメンバーも含めて、最高の仲間と最高の舞台で試合ができた。甲子園以上の価値がありました」(上田真美)