「あうんの呼吸」とは、まさにこのこと。 現地7月24日、開会式より前に行なわれたパリオリンピック・グループリーグ初戦のパラグアイ戦(結果は5-0で日本が勝利)。三戸舜介が決めたこの日の2点目は、所属するスパルタ・ロッテルダムのチームメイト、…

「あうんの呼吸」とは、まさにこのこと。

 現地7月24日、開会式より前に行なわれたパリオリンピック・グループリーグ初戦のパラグアイ戦(結果は5-0で日本が勝利)。三戸舜介が決めたこの日の2点目は、所属するスパルタ・ロッテルダムのチームメイト、斉藤光毅のアシストによるものだった。


三戸舜介(左)と斉藤光毅(右)の相性はバツグンだ

 photo by Watanabe Koji

 63分、三戸は左サイドで斉藤のドリブルからピンポイントの折り返しを受けると、公式戦で「自身初めて」と言うヘディングでゴールを決めた。

「光毅くんの仕掛け、ドリブルの最中から目が合っていたので、あとは『ここにボールきたらいいな』っていうところに、ほんとにいいボールが来て......」(三戸)

 斉藤を讃えて、こう続けた。

「こういう舞台で、ふたりの関係で点が獲れたのはうれしいです。また、スパルタの名前も上がってくれたらと思います」

 三戸は昨年末、アルビレックス新潟から完全移籍したオランダのクラブ名を出して、得点を喜んだ。

 三戸はこの日、貴重な先制点も決めている。2得点に絡む活躍で、この日の勝利に大いに貢献した。

 一方で斉藤も、勝利の立役者のひとりだ。この三戸の2点目に加え、山本理仁が決めた3点目もアシストしている。

「僕がアシストしてとか、三戸ちゃんがアシストして得点、というシーンがなかったので」(斉藤)

 スパルタ・ロッテルダムでチームメイトとなった今シーズン後半戦。ふたりが絡んだ形での得点はエールディビジでは生み出せなかった、しかしこの大一番で、良好な関係性を見せつけた。

 パリオリンピックに向けて発表された五輪代表最終メンバー18人のうち、アジア予選に参加できなかったのは、この斉藤と三戸のふたりだけだった。斉藤は「チームに打診したんだけどダメでした」と、予選参加を希望していたことを明かしている。

【オランダで同僚となった仲良しコンビ】

 欧州で活躍する選手にとって、代表側の拘束力がない大会への参加は難しいものだ。特に予選が行なわれていた4〜5月はシーズンも大詰めで、クラブは手放してくれなかった。それだけ中心選手として活躍していた、ということでもあるが、五輪の位置づけや選手招集のあり方を日本サッカー協会も考える必要があると思わせる出来事だった。

 三戸に関しては、この冬に調子を崩して、スパルタの試合で活躍できない時期もあった。慣れた日本の環境から離れたことで、オリンピックという大舞台から遠のく可能性もあった。

 だが、「五輪は関係なく、もっと先のためにサッカー選手として」移籍を決断した三戸は、クラブでのプレーに専念。アルビレックス時代は左ウィングやインサイドでプレーしたが、スパルタでは右ウィングを与えられた。

 しかし、これが結果的に、五輪代表でも活躍の場を広げることにつながった。パラグアイ戦ではインサイドハーフでプレーしたが、メンバー構成によっては右でプレーすることもあった。平河悠が負傷したことを考えれば、次戦以降は三戸が右ウィングで先発する可能性も十分にある。

 アジア予選を経験しなかったふたりだが、6月に行なわれたアメリカ遠征ではそれぞれに存在感を見せた。アメリカとの親善試合では斎藤が「舜ちゃんが見えたので」と上げたアーリークロスを相手が手で止めてしまい、PKを獲得している。

 今回のパラグアイ戦で見せた形とは違うが、お互いに近い距離感・フィーリングを持つことがうかがえる。ふたりは7月3日のメンバー発表時もLINEで連絡を取り合いながら確認し、喜び合ったと言う。同じチームで、同じような状況を乗り越えたふたりにしかわからない、何かしらのものがあるはずだ。

 そしてふたりは、そろって「五輪での目標は金メダル」と言いきる。

「金メダル、獲りたいですし、獲れると思っています」(斉藤)

「金メダル、そうですね。歴代の先輩たちも、東京オリンピックのようなホームでも難しかったですよね。だから難しい戦いになるとは思うんですけど、僕は僕たちに自信がある。まずはグループリーグを突破すること、一戦一戦をしっかり戦うことが大事だと思います。オーバーエイジが入らなかった分、僕らだけの団結がある」(三戸)

 過去の五輪であれば、「サッカーで日本が金メダルを獲る」と口にはするもの、現実味はなかなか感じられなかった。だが、ヨーロッパで活躍する選手が増え、斉藤や三戸のようにオランダの物差しを持ち、代表でもクラブと変わらないプレーを見せ、それが結果に結びついている。

 そんな選手が彼らだけでなく何人もいることを考えると、夢は決して遠いものではないのだと思わせてくれる。かつてない期待感を抱きながら、2戦目以降を見ていくことにしたい。