(25日、第106回全国高校野球選手権千葉大会準決勝、東京学館0―7木更津総合=8回コールド) 六回裏、2点取られ、なお2死満塁の場面。東京学館の2番手投手・玉井優輝(3年)がマウンドを降りた。「お前の武器で戦ってこい」と、継投したエース…

 (25日、第106回全国高校野球選手権千葉大会準決勝、東京学館0―7木更津総合=8回コールド)

 六回裏、2点取られ、なお2死満塁の場面。東京学館の2番手投手・玉井優輝(3年)がマウンドを降りた。「お前の武器で戦ってこい」と、継投したエース・戸島舷貴(3年)に声をかけた。戸島は「玉井が踏ん張ってくれた。得意の直球で勝負する」と心に決めた。

 加えてもう一つ、強い思いがあった。相手は5歳上の兄が通っていた木更津総合。これまでも戦うたびに兄から「思いっきりやって、絶対に勝ってこい」と背中を押されてきた。兄に影響されて始めた野球。ずっと憧れの兄の背中を追いかけてきた。高3の夏、兄はメンバー入りできなかった。その思いも背負ってマウンドへ上がった。

 6点リードされた七回裏の守り。2死二、三塁で捕手の千葉ケン志朗(3年)は「ここへ投げろ」と言うようにミットを外角へ構えた。投げた直球は狙い通り。木更津総合のエース・石沢順平(3年)から三振を取り、七回コールド負けを阻止した。「よっしゃあ!」。拳を握りながら仲間と喜び合った。

 戸島はどんな状況でも落ち着いてマウンドに立つことを心がけている。この試合も笑顔を多く見せ、チームを安心させる。しかし、八回裏に1点が入り、コールド負けが決まった。その瞬間、涙がこぼれ落ちた。仲間に励まされながらグラウンドを離れた。

 いつも家族や仲間に支えられてきた。「このチームで野球ができてよかった。悔いはない」=ZOZO(芹沢みなほ)