(25日、第106回全国高校野球選手権長崎大会準々決勝 九州文化学園0―2清峰) 一回表、無死一塁。九州文化学園の2番打者松尾悠真選手(3年)が犠打を決めると、弟で清峰の捕手、瑛太選手(1年)がキャッチャーマスクを外して打球を追った。この犠…

(25日、第106回全国高校野球選手権長崎大会準々決勝 九州文化学園0―2清峰)

 一回表、無死一塁。九州文化学園の2番打者松尾悠真選手(3年)が犠打を決めると、弟で清峰の捕手、瑛太選手(1年)がキャッチャーマスクを外して打球を追った。この犠打で一塁走者は二塁に進塁し、続く打者の安打で本塁を狙ったものの、瑛太選手がこれを阻んだ。

 この回以降、九州文化学園は三塁に進めなかった。「相手の投手の球が良かった。チャンスで打てない上に守備のミスも重なった」。遊撃手の悠真選手は悔しそうに試合を振り返った。

 悠真選手は小学生の時に野球を始めた。「弟はよく練習を見に来て、自分を追うように野球を始めた」という。別のチームでプレーしていたが、お互いの練習が休みの日には、自宅でティーバッティングの練習をした。

 公式戦での対戦は今回が初めて。夏の大会が始まり、1年生捕手としてベンチ入りして注目される瑛太選手を見て、「負けてられない」と気合を入れていた。一緒に暮らすが試合のことはお互い口にしないようにしていた。

 一方、瑛太選手は、127球を投げきって完封勝利したエースの南和紀投手(3年)をリードした。「兄が打席に立ったら、絶対に打たせないようにしようと思っていた」と笑う。瑛太選手は三回裏に1死二、三塁で放った内野ゴロが敵失を誘って先制点にも貢献した。

 悠真選手は、試合を引っ張る弟の姿を見て、「自分にはない、野球のセンスがある。すげえ」と感じた。「このまま勝ち進んでほしい」。甲子園の夢を弟に託した。(榧場勇太)