(25日、第106回全国高校野球選手権茨城大会準決勝 常磐大5―6つくば秀英) 一球入魂。四回途中から救援のマウンドに上がった背番号3・常磐大の山本孟康(たけやす)(3年)は、この1年の思いすべてを込めるかのように、1球1球を全力で投げ続け…

(25日、第106回全国高校野球選手権茨城大会準決勝 常磐大5―6つくば秀英)

 一球入魂。四回途中から救援のマウンドに上がった背番号3・常磐大の山本孟康(たけやす)(3年)は、この1年の思いすべてを込めるかのように、1球1球を全力で投げ続けた。

 「4番でエース。今年はお前のチームだ」。代替わりした昨秋、海老沢芳雅監督からチームの将来を託された。

 秋の県大会で投打でチームを8強まで押し上げた矢先に、練習中に背中の関節を痛めた。全治1年の診断だった。

 背番号1は、2年生に託した。「納得はできなかった」が、治療やリハビリに取り組みながら、必死にバットを振った。投げられなくても「背番号3を与えてくれた監督の期待に応えたかった」。

 最後の夏を目前に控えた6月、約9カ月ぶりに練習試合で復帰のマウンドを踏んだ。自信を取り戻す準備は、整っていた。

 この夏の公式戦で初めて立ったマウンドは「楽しかった」。試合中盤、バックスクリーンに表示された球速が、けがをする前の最速だった139キロを示すと、口元をゆるめ、白いマウスピースをのぞかせた。

 安打を許しながらも粘っていたが同点の九回裏、守備の乱れや内野安打などで1死満塁に追い込まれた。遊撃手の阿部瑠泉(るい)(3年)が何度も笑顔で肩をたたきに来た。「悔いのない1球を投げろ」

 自信を持って投げたこの日119球目の直球は中堅まで持っていかれ、サヨナラの走者が本塁を踏んだ。

 試合後、涙は目頭でぐっとこらえた。「高校野球は終わりだけど、野球人生は最後じゃない。一緒にここまで来た仲間を誇りたい」。2年連続の夏4強に、胸を張った。(古庄暢)