大岩剛監督が前々から希望していたオーバーエージ(OA)枠を使えず、2001年生まれ以降の久保建英(レアル・ソシエダ)、鈴木唯人(ブレンビー)、鈴木彩艶(パルマ)のA代表経験者招集も叶わず、戦力的に不安視されていた2024年パリ五輪のU-2…

 大岩剛監督が前々から希望していたオーバーエージ(OA)枠を使えず、2001年生まれ以降の久保建英(レアル・ソシエダ)、鈴木唯人(ブレンビー)、鈴木彩艶(パルマ)のA代表経験者招集も叶わず、戦力的に不安視されていた2024年パリ五輪のU-23日本代表

 開幕前のルール変更によって鈴木海音(磐田)らバックアップメンバー4人の起用が可能になったのは朗報だが、24日(日本時間25日未明)の初戦・パラグアイ戦(ボルドー)直前に半田陸(G大阪)の負傷離脱が決定。内野貴史(デュッセルドルフ)を追加招集したものの、懸念材料を抱えた状態で日本は本番に挑まなければならなかった。

 しかし、勇敢で賢い選手たちはそんなネガティブ要素を一切、感じさせなかった。南米予選を1位のパラグアイ相手に序盤から主導権を握り、開始早々の5分にいきなり右CKから関根大輝(柏)がヘッドで決定機を作る。

 勢いに乗った日本は、相手右サイドバック(SB)のジルベルト・フローレスが高い位置を取るのを見逃さず、左FW斉藤光毅(ロンメル)、左SB大畑歩夢(浦和)、左インサイドハーフ(IH)の三戸舜介(スパルタ・ロッテルダム)のトライアングルで連携しながら背後に侵入。いわゆる”ポケット”と言われるペナルティエリアとゴールラインのギリギリのところを狙い続け、敵を揺さぶったのだ。

■不安を完全払拭した2点目

 その関係性が前半18分の先制弾を生み出す。斉藤のタテパスを受け、高い位置を取った大畑がマイナスクロスを入れると、ゴール前で三戸が反応。エースFW細谷真大(柏)が相手DFを巧みに抑えていたこともあり、確実に右足シュートを沈めることができた。

「トラップしたらフリーだったんで、余裕を持ってシュートと打てました」と本人も語っていたが、日本らしいコンビネーションが光ったシーンだった。

 こうして1点をリードした4分後、平河悠(ブリストル)が削られ、相手10番のワイルダー・ビエラが一発退場。日本は数的優位に立つ。だが、逆に相手が守備意識を高めたせいで攻撃のギアが上がらなくなり、前半のラストから後半頭の時間帯はやや不穏な空気も漂った。

 それを完全払拭したのが、後半18分の2点目。これもまた左サイドの崩しからだった。大畑からエリア内でボールを受けた斉藤が高度な技術と駆け引きで相手DFをかわし、マイナスクロスを中に送った。そこに飛び込んだのが三戸。彼はフリーでヘッドを放つ。これが決まり、日本はほぼ勝利を引き寄せることができた。

■「スパルタコンビ」の強烈な存在感

 そこからは右サイドの崩し、リスタート、カウンターと多彩なパターンで3点を追加。フランス入り後、コンディションを崩して出遅れていた荒木遼太郎(FC東京)らもピッチに送り出す余裕の戦いを見せ、最終的に5-0で圧勝。これだけの好発信は大岩監督も想定異常だったかもしれない。

 とりわけ、強烈な存在感を放ったのが、4~5月のAFC・U-23アジアカップ(カタール)にチーム事情で参戦できなかった斉藤・三戸の「スパルタコンビ」だ。この半年間、クラブで共闘してきた彼らはお互いの個性やストロングを分かり合っていて、”阿吽の呼吸”がある。序盤からの左の崩しは2人がいてこそ成立したと言っていいだろう。

「自分が欧州で経験したことが五輪で出せるといい」と斉藤は大会前に話していたが、屈強なDF相手でもひるむことなく突破やチャンスメークで攻撃をけん引した。三戸の2点目をアシストしただけでなく、中継役としてボールをつなぎ、自らも危ないゾーンに入っていくような機転の利いた仕事ぶりが光った。

 三戸にしても臨機応変にポジションを変えながらフィニッシュに絡んでいくクレバーさが際立っていた。2人の五輪参戦効果がどれだけ大きかったかを改めて痛感させてくれたパラグアイ戦だったのではないか。

 中2日で迎える27日(日本時間28日早朝)のマリ戦に勝てば、日本は早々とグループ突破を決められる。そういう理想的なシナリオに持っていくことが肝要だ。

(取材・文/元川悦子)

(後半へ続く)

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