平畠啓史の2024シーズンJ2中間報告 オススメ選手編日本屈指のサッカーマニア、J2ウォッチャーで知られる平畠啓史さんが、2024シーズンの中間報告。今季すばらしいプレーを見せているオススメの注目選手を教えてもらった。前編「平畠さんのJ2中…

平畠啓史の2024シーズンJ2中間報告 オススメ選手編

日本屈指のサッカーマニア、J2ウォッチャーで知られる平畠啓史さんが、2024シーズンの中間報告。今季すばらしいプレーを見せているオススメの注目選手を教えてもらった。

前編「平畠さんのJ2中間報告・チーム分析編」>>

【動画】平畠啓史が語る2024J2中間報告・選手編↓↓↓

【キックだけで見せられる】

福森晃斗(横浜FC/DF)

 横浜FCの福森晃斗選手は、やっぱり違いますね。シーズン前からやるだろうなと思ってましたけど、期待以上というか、キックだけであれだけ見せられるが選手いるんだなと。1試合で少なくとも2、3本は「うわー」っていうパスを出しますよね。コーナーキックのアシストとかもそうやし、パス交換の時でもすごいパスを出す。キックがうまいっていいなって、単純に思います。



福森晃斗は左足のキックを武器に今季横浜FCで活躍を見せている photo by Getty Images

 横浜FCの三田啓貴選手とお会いして喋ってる時も、「いやぁ、やっぱ福森すげーよ」みたいな。「いやいや、三田選手もキックうまいじゃないですか。(福森選手は)何がすごいんですか?」って聞いたら、「同じところに高い確率で蹴れる」って言うんですよ。それがもう単純にすごいと。

 キックがうまくても、ピッチの条件も変わるし、相手の選手も変わってくるなかでも同じところに蹴れるという。ある程度キックのうまい左利きの選手でも、「やっぱり福森選手はすごいよ」とおっしゃってたんで、同じチームにいる同じ左足の選手が認めるぐらいだから、よっぽどなんやろなと。

 アウェーのファジアーノ岡山戦で横浜FCが3点取ったんですけど、全部福森選手のアシストだったんです。ペナルティのワッキーが福森選手のことを大好きだから、僕がワッキーに「岡山戦前半だけでいいから見たほうがいいよ」ってLINEしました(笑)。

 すごいキックがあるがゆえに、周りの選手がもう信じてるっていうか、(ボールが)来るに決まってるって感じで走るんですよね。本当にもう、福森選手が試合を決めちゃってます。

 あと、中村俊輔コーチからもちょっと影響を受けたりとか。なんか具体的にすごく細かく言われてるっていうよりも、ちょっとしたことでヒントを得たりしてるんじゃないかなって僕は思ったりしてますね。。

 ポジションは3バックの左なんで、相手チームも福森選手がすごいのはわかっていても、そこを抑えに行くことがポジション的にちょっと難しい。それも絶妙だと思うんですね。なんなら、福森選手にマンマークつけたらおもろいのになって思ってるんですけど。福森選手に蹴らさないっていう作戦、福森選手を完璧に抑えたらどうなるのかなと。

【武骨なのにめっちゃうまい】

南野遥海(栃木SC/FW)

 今シーズンは栃木SCでプレーしてる南野遥海選手、いいですね。左足の思いきりのよさは見ていて気持ちいい。ちょっと武骨な感じ。20歳ぐらいの若い選手って、技術はあるけど、どちらかというとちょっとなよっとしてるじゃないけど、テクニックで見せます、みたいな感じの選手も多いですよね。

 でもこの選手は迫力というか、なんか勢いみたいなものがある。個人的に武骨な感じがすごく好きで、去年もテゲバジャーロ宮崎で10点取ってるんですけど、左足がツボに入った時の振りとかは半端ないですね。見ていて気持ちいいので、今後も楽しみ。

 無骨でちょっと荒削りな感じに見えるんですが、実はめっちゃうまいんです。武骨な感じを出して、あえて相手にテクニックを見せないようにしてるんちゃうかなって思うぐらい。

 メンタリティ的にも相手に向かっていきますし、逃げないところも、この選手のすごく好きなところですね。たとえば、ボールを受けてキープしている時に、相手が体を寄せてきても逃げない。ガンガン体を当てていく。なんならファールされたら怒って、戦う意思を見せる。そこはすごい好きなところです。

 今はポジション的には一番前というよりも、インサイドハーフ的なポジションでプレーはしていますけど、前を向いてボールを持てるので、自分の得意の形に持ち込みやすいかなという気はしていますね。去年はゲームによってはサイドハーフでプレーしていることもあったんですけど、それよりはもうちょっと真ん中気味でプレーできているので、よりいいかなと。

 右45度みたいなところで、左足でちょっと曲げながら決めていくようなシュートも本当にうまい。常に可能性を感じさる。彼にボールが入ったら、なんか起こるんちゃうかなというのを、見せられる選手かなと思いますね。

【パスカットがすごい!】

永木亮太(徳島ヴォルティス/MF)

 シーズン序盤、徳島は本当に大変だったと思うんですね。どんなことがあって大変だったのかは深くまでは知らないですが、大変だったと思うんですよ。監督が代わってチームを立て直してきたなかで、永木亮太選手がボランチで活躍しています。永木選手は、守備がめっちゃうまいですね。ボランチって、パスさばきに目が行きがちですが、セカンドボールとかルーズボールに対する反応が全然違う。

 パスカットもうまいですね。永木選手がすごいのは、相手選手がギリギリに通そうとしてるのをカットするんじゃなくて、「これは100%通るでしょ」っていうのをカットしちゃうんですよ。相手選手からしたら、奪われる心配のないパスのつもりで出してるんですね。そういうパスを結構カットする。それって、相手にうまく出させてるということなんですよね。

 守備の技術というのが身についている。鹿島アントラーズでもプレーしていたし、そういうなかで自然と身についているのか、やっぱりJ1でやってた人の凄さですね。単純にキックがすごいとか、足が速いとか、ヘディングが強いとかもあるけど、ピッチのなかでの駆け引きでしれっとやることのすごさ。だから、スタジアムがどよめくとか、みんながうわーってなるわけじゃないないんですけど、実際はすごいことやってます。

 あのパスカットは、シュート決めたりとか、ゴールカバーしたりとかと同じぐらい価値のあるすごいプレーだと思っています。徳島は立ち直ってきていますが、そのなかで僕は永木選手の存在が結構大きいかなって見ています。徳島が反撃していくなかでのキーマンのひとりかと。

 徳島は、最近はビルドアップもすごくスムーズですね。やっぱりそのあたりは、永木選手がボールに触らなくても後ろが回しやすいポジションの取り方とか、苦しい時にいい感じで降りてきたりとかがある。前線が豪華なので、中盤からいいボールがサイドや前に出ていくと、普通にやれそうな気がしますよね。

 これで徳島がプレーオフに入ったら、すごいドラマですよね。最初の本当に大変なところから立て直してきたっていう。増田功作監督も本当にすごいと思う。そのなかでも永木選手の活躍は見逃せませんね。

【ゲームを読めているキーマン】

田口泰士(ジェフユナイテッド千葉/MF)

 今年もジェフユナイテッド千葉の田口泰士選手は、すごいなと思うことが多いですね。

 ここ最近、守備の時は4-4-2にしておいて、攻撃になったらちょっと4-3-3気味に中盤の並びが変わっていくチームが結構多いですよね。千葉も守備の時は小林祐介選手と田口選手が並んでるように見えるけど、攻撃になったら田口選手がもうちょっとインサイドハーフ気味に上がっていく。

 だからシュートシーンに顔を出すことがすごく多いです。田口選手ってどちらかというとパスもうまいし、ボールをさばいたり、大きな展開を作ったりするイメージがあるけど、最近では、前でシュートシーンに顔出すことがすごく多いんですよね。

 千葉って、基本的にサイドで切り返さないじゃないですか。そこでもう一回崩しましょうじゃなくて、サイド行ったらもうそのままクロスという形なんですが、そこに田口選手がちゃんとついていけてるのがすごいですよ。

 千葉が多く得点できている時は、田口選手のポジショニングがやっぱすごい。大量得点が取れてる試合でも、毎回攻撃がうまくいくわけじゃない。そういう時の田口選手が絶妙で、前に行かないんですよ。スコアとか、チームの状況とか、時間帯を考えて、前に行かない選択を取る。あれがすごいなと。たぶんもっと点を取りたいし、取れるから行っちゃえとなるじゃないですか。その時、田口選手は行かないんですよね。それがやっぱりすごくゲームを読めてるなって思うんです。

 だから田口選手のポジションを見たら、千葉が今どうしたいかがなんか見えてくるような。もっと前行こうよなのか、いやいや、今行かんとちょっと押さえとこうよっていう。

 もちろん大量得点取ったら勝てるんですけど、1点、2点でも勝っていかないと、順位は上がっていかない。そこのキーマンでもあると思うんですよね。勝ち点を重ねていくことに対しての、田口選手の仕事のウエイトって相当大きいんじゃないかなと思う。

【年齢を重ねても現状維持以上の出来】

徳重健太(愛媛FC/GK)&林彰洋(ベガルタ仙台/GK)

 徳重健太選手ももう40歳ですからね。この選手のセーブでだいぶ愛媛FCは救われています。GKは辻周吾選手がもともと出ていて、辻選手がちょっとケガで外れて徳重選手が出ていますが、徳重選手のおかげで勝ったゲーム、勝ち点を取ったゲームとか、本当に大きい。

 ベガルタ仙台の林彰洋選手とかもそうですが、ある程度の年齢になった選手が、現状維持じゃなくてちょっとずつでも上がってんちゃうかって思わせるのは、やっぱゴールキーパーならではかもしれない。そこは今シーズンを見ていて面白いなと思うところですね。

 林選手とシーズン前に会って、去年の暮れでしたね。「昨日契約してきたんですよ。もう年齢も年齢なんでクラブにも言いたいことを言いました」と。それはなぜかっていうと「もしかしたら、もう今年が最後になるかもしれない。思いっきりやりたいからクラブもやりましょうよ」っていう話をされていました。

 徳重選手にしても、林選手にしても、若い選手よりも一年一年が勝負かなって思うんですよ。そのなかで、今年は林選手も仙台で結果出してるし、徳重選手も結果出してるのは、やっぱりプロで長くやってる選手はすごいと思いますね。

 ふたりとも若い時からすごいキーパーって言われていた選手。もともとのポテンシャルがまずすごいんやろと思います。それプラス、日々の鍛錬みたいなところ、両方ないとなかなかプロのゴールキーパーで長年やっていくのは難しいのかなと。

 あと、たとえば愛媛で、40歳でサッカー好きですとか、昔サッカーやってたっていう人が、その徳重選手のプレー見たら、勇気をもらう。まだまだ頑張らなあかんな、まだまだ頑張れるよなって思わせてくれる。それってすごい価値があることですよ。