木村和久の「新・お気楽ゴルフ」連載◆第40回 今から35年ぐらい前にゴルフを始めました。友だちや仕事仲間がゴルフをやり出した時期で、それに便乗したのです。 友人に2~3回練習場に連れていってもらい、「まあ、こんな感じじゃないの。あとは現場で…

木村和久の「新・お気楽ゴルフ」
連載◆第40回

 今から35年ぐらい前にゴルフを始めました。友だちや仕事仲間がゴルフをやり出した時期で、それに便乗したのです。

 友人に2~3回練習場に連れていってもらい、「まあ、こんな感じじゃないの。あとは現場でやってみよう」と言われてのラウンドデビューでした。

 スコアはテンパっていたので、途中から自分では数えられなくなり、同伴メンバーにつけてもらいました。無我夢中で言われるがまま打っていた、というのが正直なところ。結局、スコアは140いくつだったのは覚えています。

 その後、1年ぐらいは130台をキープ......って言っても、ビギナールールで、いろいろとオマケしてもらっていました。

 たぶん、令和になってゴルフを始めた若者たちの多くは、私の30数年前と同じ状況ではないでしょうか。ただ、昔のゴルフは必ず上級者が一緒に回っていて、あれこれ指導してくれたので、個人的にも助かるし、対外的にも迷惑をかけることは少なかったです。

 それが今は、上級者が引率しないケースがほとんど。初心者だけで回って勝手に大暴れし、プレーを遅延させていることにすら気づかない、ということが多いです

 そんなわけで、今さらながらですが、そういった方々は"初心者ルール"というものを設定し、周りに迷惑をかけずにそこそこラウンドしていただけたら、と思います。

 まずやるべきことは、これです。

(1)最大スコアを設定する
 昭和・平成のゴルフでは、ギブアップはパーの3倍。すなわち、ロングホールなら「15」というのが暗黙の了解事項でした。だから、初心者ですごく叩いている人に対しては、「このホールはギブアップして、次のホールに行こう」と諭します。

 ビギナーの場合、叩きすぎるとプレーの遅延にもなりますので、やはりスコアの線引きは必要かと思います。

 そういうビギナーの増加を見越してなのか、2019年のR&A(英国ゴルフ協会)のルール改正で、最大スコアを自由に決めていいことになりました。これは、国際的な共通ルールですから、どんどん採用しましょう。

 では、その最大スコアはどうやって決めるのか?

 スタート前に、そのプレーを司る委員会が決めます。委員会の具体例は、コンペなら幹事さん、プライベートラウンドならそれを主催した人、仕切る人です。そういった人たちが、1ホールを最大いくつでカットするのか、自由に決めていいのです。

 最大スコアの制限はありません。個人的に最大スコアを採用する際は、パーの2倍にしていることが多いですが、「甘い」という意見もあったりします。けど、パーの3倍にしたら、従来のギブアップと同じですし......。さじ加減が難しいです。

 まあ、仲間内であれば、プレー開始前に同伴メンバーみんなで協議して決めるのがいいでしょう。

(2)隣のホールや崖下にあるセーフボールの取り扱い
 ビギナーが林を越えて、隣のホールへ打ち込んでしまった――そのときのビギナーの心境は、「頼む、OB(またはワンペナ)になってくれ。セーフだとそこからボールを打たねばならない。それがしんどい」といったところでしょうか。

 お気持ち、お察しします。もしセーフだった場合、周りで怖いオジさんが見ているなか、林越えのショットを打たねばなりません。そんな"公開処刑"みたいなこと、できるわけがないじゃないですか。

 そこで、ビギナーの場合は、隣にいったボールがセーフでも、それを拾ってきて自らのホールのフェアウェーに戻し、ワンペナで打てばいいと思います。

 すごい崖の下にボールを打ってしまったときも同様です。同伴メンバーに「セーフでよかったね」と言われたところで、「あそこから、どうやって出せばいいんじゃ!」ってなりますからね。だいたい、崖を降りていく間に足を捻挫しますって。

 ならば、崖下のボールは諦めて、上からワンペナで打てばいいと思いますよ。

 ルールどおりにやると、初心者の心は萎えてしまうシーンが多々あります。そこは、臨機応変に都合よく変えて構わないと思うんですけどね。

(3)バンカーショットにおける折衷案
 今は正式ルールとして、バンカーから出そうもないときは、2打罰で外に出せます。けど、そればっかりやっていると、いつまで経ってもバンカーショットを覚えられません。

 というわけで、折衷案を提案したいと思います。ビギナーだけが採用できるローカルルールを設定しましょう。

「ビギナーはバンカーをウェイストエリア(waste area)扱いにできる」――この一文を付加してはどうでしょうか。

 ウェイストエリアとは、荒れ地のこと。アメリカのコースに多く存在し、そこでは正式にソールしてショットが打てます。

 だからまず、ソールして打ってみる。次第に慣れたら、正式なバンカーショットを打つ。当分、これでいいと思います。実際のところ、気づかずにソールして打っている初心者は結構いますけどね。

(4)空振りはカウントしない
 最近、ティーイングエリア内のチョロは無罰でティーアップして打ち直せるようになりました。正式ルールでさえ、初心者に歩み寄っているのですから、初心者の空振りは多めに見てあげましょう。

(5)ティーショットのOBは前進4打(ショートホールは前進3打等)を選べる
 今は、ほとんどのホールで前進3打、あるいは前進4打がありますが、たまにないホールもあります。そういうときは、臨機応変に仮設の前進ティーを作って、初心者にはそこから打ってもらいましょう。そのほうが、初心者も精神的にラクになるだろうし、進行も早くなっていいです。

(6)スルーザグリーン6インチプレースの採用
 ゴルフはありのままに打つべし、という原則があります。けど、初心者にとってはそれが難義。やはり、最初のうちはスルーザグリーン6インチプレースを採用し、難しいライやベアグランド、ディボット跡などからのショットは避けていいんじゃないでしょうか。

 スルーザグリーン6インチプレースは、決してズルい行為とか、甘やかしているとか、ではないと思います。

 たとえば、自分のホームコースでスコアを提出して、ハンデ申請をするとしますよね。その際、スコアカード提出欄には「プリファードライをしたか?」というチェック欄があります。それは、コンディションの悪いライで、ボールに泥がついたりする場合、それを拭いて6インチ程度場所をズラせる処置です。

 つまり、正式なハンデキャップ取得のプレーでさえ、条件が悪い場合には6インチ以内にボールを置き直してプレーできる、ということです。もちろん、そういうプレーでスコア提出したときは、ハンデが少し下がりますが、でもちゃんとハンデキャップはもらえます。

 初心者がたまにナイスショットをして、フェアウェーのど真ん中にボールが飛んでいきました。ところが、落下地点に行ってみると、ディボット跡のなかにボールがあったりして......。ベテランは「これもゴルフだ」と言いますが、ビギナーはそんな"マイナス運"まで引き受ける必要はないと思います。


最近、初心者だけでラウンドしているパーティーの遅延プレーが目につくものの、全般的なマナーを考えると、いろいろと問題がある「昭和ゴルファー」よりはマシかもしれませんね...

 illustration by Hattori Motonobu

 あんまり緩いことばかり記していると、ゴルフに厳しい方からおしかりを受けるので、これぐらいにしておきますけど、昔の人はルール以前に、飲酒と喫煙をしながらラウンドし、さらに賭けゴルフまでしていたんですよ。そんな法律を破ってラウンドをしていた人々に、「ちゃんとルールを守れ」なんて言われたくないですよね。

 今や、ニギる人がほとんどいなくなりました。実に健全で気分がいいです。