前半なかばで相手パラグアイ選手が1人退場になり、70分間以上を数的優位で戦って5-0。しかし、「楽勝」のひと言では片づけられない試合だった。ひとつ間違えば、勝ち点を失いかねない危険に満ちた時間帯があったのだ。サッカー日本代表、サムライブル…

 前半なかばで相手パラグアイ選手が1人退場になり、70分間以上を数的優位で戦って5-0。しかし、「楽勝」のひと言では片づけられない試合だった。ひとつ間違えば、勝ち点を失いかねない危険に満ちた時間帯があったのだ。サッカー日本代表、サムライブルーのパリ五輪初戦パラグアイ戦を、サッカージャーナリストの大住良之が徹底分析する!

非常に良かった前半戦「完璧と言っていい得点」

 日本の立ち上がりは非常に良かった。相手の圧力に負けずにパスを前につけ、それを前線の選手たちが的確にさばいて突破の予感を抱かせた。そして、18分には左サイドの見事な突破から三戸舜介の先制ゴールが生まれる。
 高井幸大の鋭い縦パス、インサイドで受けた斉藤光毅のターンとアグレッシブな縦パス、オーバーラップした大畑歩夢のワンタッチでの折り返し、受けた三戸の落ち着き、三戸にスペースをつくった細谷真大のがんばり、そして三戸のシュート。「完璧」と言っていい得点だった。
 そして25分に平川悠へのファウルでパラグアイのウィルデル・ビエラが退場になると、あわてずにGK小久保玲央ブライアンと両センターバックの木村誠二、高井でパスをつなぎ、前半は危なげなく終わった。

襲われる日本ゴール「脳裏をよぎるカタール戦」

 しかし後半、まるでうららかな春の日が突然の風と雨で変わってしまうように、一転して日本ゴールが襲われる。立ち上がり早々に高井がボールを離すタイミングを失って奪われ、とっさにファウル。イエローカードを出される。これが、この試合で初めての「ミス」だった。

 そこから押し込まれる時間が続く。パラグアイのCKやFKが連続したとき、日本選手の脳裏には、AFCアジアカップ準々決勝のカタール戦がよぎったはずだ。
 オリンピック出場権獲得に絶対勝たなければならなかったカタール戦、前半の相手GKの退場で数的優位になった日本。しかし、後半は相手の気迫に押され、FKから勝ち越し点を奪われた。なんとか追いつき、延長戦で突き放すことができたが、危険極まりない試合だった。
 前半の戦いには、その教訓が生きていたように見えた。しかし後半は、あわやその二の舞いになるところだった。パラグアイの攻勢をしのぐことができたのは、カタール戦を思い起こし、「絶対に失点しない」という強い気持ちを全員が共有していたからに違いない。

いま一番読まれている記事を読む