(24日、第106回全国高校野球選手権福岡大会決勝 福岡大大濠2―5西日本短大付) 「僕でアウトを取るつもりなのか」。同点で迎えた八回裏2死一、二塁。西日本短大付の山下航輝捕手(2年)は打席に入る前、力いっぱい、大きな素振りをした。前の打…

 (24日、第106回全国高校野球選手権福岡大会決勝 福岡大大濠2―5西日本短大付)

 「僕でアウトを取るつもりなのか」。同点で迎えた八回裏2死一、二塁。西日本短大付の山下航輝捕手(2年)は打席に入る前、力いっぱい、大きな素振りをした。前の打者が申告敬遠となったのが悔しかった。

 ファウルで2球粘り、6球目。真ん中高めのスライダーをたたくと、右翼ポール際への特大のファウルに。球場がざわついたが、冷静だった。「振れている。次は打てる」。同じコースに来た次の球をしっかりためて振り抜くと、今度はより美しい放物線を描き、右翼席に飛びこんだ。値千金の勝ち越し3点本塁打となった。

 打撃力と冷静な判断を買われ、正捕手として初めて迎えた夏の福岡県大会。エースの村上太一投手(3年)を支えたい、と意気込んだが、実際は支えられてばかりだった。得意なはずの打撃でも結果が残せていなかった。

 何とか力になりたい。大会中、毎晩振り込みを続けた成果が八回、最高の形で表れた。うれしくて、涙を浮かべてベンチに戻ると、満面の笑みの村上投手が「よくやってくれた、ありがとう」。

 エースをやっと助けることができた。甲子園ではもっと、頼りがいのある捕手になりたい。(太田悠斗)