(24日、第106回全国高校野球選手権神奈川大会決勝 横浜4―6東海大相模) 1点リードの三回表2死。ボールが先行し、「次の球は入れてくるぞ」と狙い澄ました。横浜の3番椎木卿五(けいご)(3年)は、東海大相模の先発藤田琉生(3年)の直球を迷…

(24日、第106回全国高校野球選手権神奈川大会決勝 横浜4―6東海大相模)

 1点リードの三回表2死。ボールが先行し、「次の球は入れてくるぞ」と狙い澄ました。横浜の3番椎木卿五(けいご)(3年)は、東海大相模の先発藤田琉生(3年)の直球を迷いなく振り抜くと、打球はライトスタンドへ。ダイヤモンドを回りながら「よっしゃー!」と叫んだ。

 2年半の高校野球生活は、挫折の連続だった。昨夏、2年生ながら正捕手としてマスクをかぶるも、慶応との決勝で九回に逆転を許した。「1球で流れが変わってしまった」

 秋からの新チームでは、一度は主将を任されたが、今年の5月に主将の座を後輩に譲ることになった。「悔しいの一言でした」。椎木を主将に戻すよう監督に直訴する3年生もいたが、「プレーに専念してほしい」と、監督の考えは変わらなかった。

 それでも、主将を交代する前と同じように、椎木はプレーや声かけでチームを鼓舞し続けた。この日の八回裏、同点に追いつかれたときには、「すみません」と謝る投手に、「お前のせいじゃない。次、逆転してあげるから」と言って肩をたたいた。その後、2点適時打で勝ち越しを許したが、「最高のボールだった。悔いはない」とまっすぐな目で言った。

 九回表、あとアウト一つで敗退という状況でも、椎木は中前打を放ち、気を吐いた。2死一、二塁までチャンスを広げたが、最後の打者が遊ゴロに倒れると、両膝をついて崩れ落ちた。

 この日、初回に先制の適時二塁打を、七回には右中間を破る三塁打を放ち、椎木はサイクル安打を達成。試合中は気付かなかったというが、「結果的にそういう形になって良かった」。

 今後、プロ志望届を出す予定。この悔しさを乗り越え、「上のステージ」での飛躍を誓う。(中嶋周平)