(24日、第106回全国高校野球選手権福岡大会 西日本短大付5―2福岡大大濠) 同点で迎えた八回2死一、二塁。打席に向かう西日本短大付の8番山下航輝(2年)は前打者が申告敬遠され、「悔しかった」と燃えていた。 2―2から粘った6球目は右翼…

 (24日、第106回全国高校野球選手権福岡大会 西日本短大付5―2福岡大大濠)

 同点で迎えた八回2死一、二塁。打席に向かう西日本短大付の8番山下航輝(2年)は前打者が申告敬遠され、「悔しかった」と燃えていた。

 2―2から粘った6球目は右翼ポール際への大きなファウル。「行ったかなと思ったけど、打球が切れてしまった」。野球界に伝わる「三振前の……」という「格言」は頭によぎらない。「バットは振れている」と感じていた。

 7球目。真ん中高めに甘く入ってきたスライダーを、見逃すはずがない。思い切りよく振り抜いた打球は右翼席で弾んだ。「打ち直し」の一振りが決勝3ランとなった。

 福岡大大濠には昨秋の県大会5回戦で3―4でサヨナラ負け。今春の県大会5回戦も4―6で苦杯をなめた。

 「打倒大濠」を掲げ、チーム全員で「自分たちは挑戦者」と言い続けてきた。試合前には昨年のワールド・ベースボール・クラシック(WBC)決勝前に飛び出した大谷翔平の言葉を念頭に、「憧れるのをやめましょう」と声を掛け合った。

 卒業生の西村慎太郎監督にとっても、福岡大大濠は1989年の福岡大会決勝で敗れた因縁の相手だ。当時、チームメートだった日本ハムの新庄剛志監督がサイクル安打を達成したが、試合は4―6で敗れ、涙をのんだ。

 西村監督は「3年生が2年生に声を掛けるなど、チーム全体が成長してきた」と話す。勝ち越し3ランの瞬間は「この子たちは(甲子園への)招待状をもらえるのかなと思った」。試合後は涙が止まらなかった。=北九州市民(鷹見正之)