(23日、第106回全国高校野球選手権富山大会準々決勝 未来富山4―1新湊) 最後の打者が三振に倒れ、ゲームセット。新湊の1番打者・中島将翔(まさと)選手(3年)は相手の校歌をベンチ前で聞きながら、時折天を仰いだ。 負けられない訳があった…

 (23日、第106回全国高校野球選手権富山大会準々決勝 未来富山4―1新湊)

 最後の打者が三振に倒れ、ゲームセット。新湊の1番打者・中島将翔(まさと)選手(3年)は相手の校歌をベンチ前で聞きながら、時折天を仰いだ。

 負けられない訳があった。星稜(石川)にいる双子の弟・海翔(かいと)選手と甲子園で戦う夢があったからだ。

 富山県射水市内の小学校を卒業し、ともに星稜中に進んだ。全国トップクラスの野球部なだけに「実力不足。ここにいても試合に出られない」と思った。家族で話し合い、新湊に入学。弟は星稜に残った。

 2人とも実家から通い、同じ部屋で生活している。中島選手は170センチの俊足巧打、弟は178センチのパワーヒッター。中島選手は今夏、背番号7をつけ、弟も星稜で同じ背番号をもらった。弟の一桁の番号に「正直、あのメンバーの中では難しいかな、と思っていたけれどすごい。『やるな』と言いました」。それだけに「もっと自分も頑張ろう。弟より先に負けられない」と気合が入った。

 この日、中島選手は一回裏、左前安打で出塁した。有倉昇平監督は「気持ちが前面に出る選手で、彼が出ればチームが盛り上がる。一生懸命な姿はチームにプラスだった」と評した。

 星稜はこの日、石川大会4強に勝ち進んだ。甲子園での兄弟対決の夢はかなわなかった。「悔しいです。でも1番打者としての役割は果たせたと思う」と泣きはらした目で話した。

 今後は大学進学に向け、机に向かう。成績も校内で最上位といい、「将来は経営学を学びたい」。首都圏の国立大学を目指している。(前多健吾)