(23日、第106回全国高校野球選手権北北海道大会決勝 白樺学園5―2クラーク国際) 3点を追う土壇場の九回裏、二死満塁。クラーク国際の4番・児玉旭陽選手(3年)が打席へ。 長打で同点の場面。「神様がおれの努力を見てくれていたんだ。おれに回…

(23日、第106回全国高校野球選手権北北海道大会決勝 白樺学園5―2クラーク国際)

 3点を追う土壇場の九回裏、二死満塁。クラーク国際の4番・児玉旭陽選手(3年)が打席へ。

 長打で同点の場面。「神様がおれの努力を見てくれていたんだ。おれに回してくれたんだ」。そして、「信じてくれている仲間のためにしっかり振り切ろう」と、打席に入った。

 仙台市出身。中学時代は4番手投手だった。「制球が悪くて、球は遅い。足も遅いし、守備も下手。何の取りえもなかった」と、当時を振り返る。それでも、「甲子園を本気でめざしたい」とクラーク国際にやってきた。

 ひとつ上の先輩たちは春夏連続で甲子園に出場し、夏は同校悲願の「甲子園1勝」を達成した。大きな存在だった先輩たちとの練習は厳しかった。最初はついていくだけで一杯一杯だったが、「何のためにここに来たんだ」と言い聞かせた。

 厳しい練習を続け、技術は上達した。先輩たちに連れて行ってもらった昨年の春夏はベンチから甲子園を見つめた。「次は自分がプレーする番だ」。うれしさと悔しさを持ち帰ると、昨秋の新チームから投打の中心選手になった。

 しかし、昨秋の全道大会は北海にコールド負け。帽子のつばには「一生カス」と書いた。

 「どんなに努力してもおれは一生下手くそ。勘違いするなよ」という思いを忘れないようにするためだった。

 この試合、得点圏に走者を置いた場面で計3度、継投した。「チームに信頼されている証し」と奮い立った。

 九回の打席。変化球を振り抜いた打球はいい手応えでセンターへ。「抜けてくれ」。だが相手の美技に阻まれた。

 「神様は甘くなかった。もっと努力しろということかな」。

 紙一重の差で甲子園でプレーする夢がかなわなかったが、「この先も野球を続けよう。努力を続けよう」。そう誓った。(佐々木洋輔)