(23日、第106回全国高校野球選手権新潟大会準決勝 新潟産大付9-5中越) 「優志に回せ」。九回裏2死。こんな声でベンチが沸き立つ中、中越の主将で4番の樋口優志(3年)は打席に立った。「自分は本当に幸せ者だ」。その4球目。打球は遊撃手から…

(23日、第106回全国高校野球選手権新潟大会準決勝 新潟産大付9-5中越)

 「優志に回せ」。九回裏2死。こんな声でベンチが沸き立つ中、中越の主将で4番の樋口優志(3年)は打席に立った。「自分は本当に幸せ者だ」。その4球目。打球は遊撃手から一塁に送られ、頭から滑り込むがアウト。樋口は起き上がれず、仲間にかかえられて整列に加わった。

 中越の部員たちは誰もが、この大会に賭ける樋口の思いを知っていた。

 昨夏の決勝、東京学館新潟を九回2死まで追い込みながら、中越は逆転サヨナラ負けを喫した。マスクをかぶっていたのは樋口。その場面を目に焼き付け「1球の怖さを知り、忘れずに練習をしてきた」。本田仁哉監督も「なかなか経験しないような悔しい思いをした。樋口を何とか喜ばせたい、という気持ちが、チームの原動力だった」と言う。

 試合は中越が先行し、新潟産大付が追いすがる展開。七回にリードを許すと、その後は追いつけなかった。

 樋口は「お世話になった人たちに恩返しをしたかった。やりきったが、やっぱり悔しい」と、唇をかんだ。(久保田正)