(23日、第106回全国高校野球選手権茨城大会準々決勝 土浦日大2―3常磐大) 九回裏2死三塁。1ボール2ストライクと追い込んだ。炎天のもと投じた119球目は直球。左頭上を越え、中堅に抜けて行く打球を目で追っていた土浦日大の先発・大井駿一郎…

(23日、第106回全国高校野球選手権茨城大会準々決勝 土浦日大2―3常磐大)

 九回裏2死三塁。1ボール2ストライクと追い込んだ。炎天のもと投じた119球目は直球。左頭上を越え、中堅に抜けて行く打球を目で追っていた土浦日大の先発・大井駿一郎(3年)は、崩れるようにひざをついて泣き伏した。

 サヨナラの走者は守備の乱れで背負った。「仲間のミスは俺がカバーする」。昨夏の甲子園4強メンバーの1人として、背中でチームを勇気づけたかった。

 代替わりしたあと、チームは結果に苦しんだ。秋の県大会は2回戦で敗れた。「先輩たちの姿ばかり追いかけ、焦りがあった。新しくレギュラーになった選手と、試合や練習に臨む姿勢に温度差があった」

 甲子園の舞台に一緒に立った中本佳吾(3年)が主将としてチームを引っ張る。大井はプレーで支えた。背番号6だったが、春は4試合に登板し、県大会8強にまで押し上げた。少しずつ、チームはまとまっていった。

 初めて背番号1をつけた夏、4番として投打で活躍した。この日も、五回に適時打を放って先取点を挙げ、投げては六回まで1安打に相手打線を抑えてチームをもり立てた。同点に追いつかれてからも、「振り出しに戻っただけ」と、強気を崩さなかった。

 試合後、大井はこう言い切った。「あの(最後の)1球に悔いはない。逃げたら負けだと思ったから」。ただ、「このチームでも甲子園に行きたかった」。かなえられなかった夢に涙した。(古庄暢)