(23日、第106回全国高校野球選手権宮城大会決勝、聖和学園8―5仙台育英) この夏、仙台育英が相手に先制を許したのは初めてだった。 「自分たちで取り返したらいい」。初回から追いかける展開でも、4番打者・鈴木拓斗選手(3年)は落ち着いてい…

 (23日、第106回全国高校野球選手権宮城大会決勝、聖和学園8―5仙台育英)

 この夏、仙台育英が相手に先制を許したのは初めてだった。

 「自分たちで取り返したらいい」。初回から追いかける展開でも、4番打者・鈴木拓斗選手(3年)は落ち着いていた。一回裏2死二塁の場面で右前適時打を放ち、チームはすぐさま追いついた。4点を追う五回にも左前適時打を放った。

 昨年の夏の甲子園では、2年生ながら2本塁打を放つも「振るだけのバッターだった」。新チームになってからは「チームが苦しいときに1本出せる4番」を目指してきた。打撃練習ではただ繰り返すのではなく、球数を制限し、確実に安打を放つことを意識した。

 昨夏の甲子園準優勝後、新チームになって臨んだ秋の県大会では準々決勝敗退。その後は「チームを見直そう」と副主将兼学生コーチとなり、レギュラーメンバーながら一歩引いて、チームをまとめる立場も担った。

 ただ、春の東北大会直後には肉離れになり、治るのは8月末と診断された。「終わったな」。気持ちが切れかけた。

 それでも「絶対、戻ってこい」という監督の言葉に奮起し、治療に励んだ。夏の大会直前まで練習できない状態だったが、大会後半は4番としてフル出場しチームを勢いづけた。聖和学園の打線の勢いには一歩及ばなかったものの「やれることは全てやってきた。悔いはない」。涙を流した後、前を向いた。(岸めぐみ)