(23日、第106回全国高校野球選手権熊本大会準決勝、九州学院1―5熊本工) 「ここからはね返せる。それだけの練習はしてきた」。八回裏の熊本工の攻撃が終わり、右翼の守備位置からベンチに戻ってきた九州学院の紫垣俊吾主将(3年)は円陣で声を張…

 (23日、第106回全国高校野球選手権熊本大会準決勝、九州学院1―5熊本工)

 「ここからはね返せる。それだけの練習はしてきた」。八回裏の熊本工の攻撃が終わり、右翼の守備位置からベンチに戻ってきた九州学院の紫垣俊吾主将(3年)は円陣で声を張り上げた。ユニホームは土にまみれて真っ黒になっていた。

 この試合で紫垣主将は二回表、先頭打者で安打を放った。相手投手の配球を研究して「外の変化球で攻めてくる」と読んだ通りにチェンジアップを中前にはじき返した。

 走者になると大きくリードを取り、相手バッテリーに警戒させてリズムを崩した。三塁まで進み、内野ゴロで頭から本塁に滑り込んだ。送球ミスを誘って先取点。試合前半の流れを九州学院に引き寄せた。

 だが後半、相手打線の集中打で4点差をつけられた。八回1死一塁からの打席では、たたきつけた打球が一塁方向への高いバウンドの投ゴロに。「絶対に出塁する」と頭から滑り込んだものの紙一重の差でアウトになった。しばらくベース近くでひざまずいたが、ベンチに戻ると「まだ、ここからだ」と仲間たちに声を掛けた。主将の行動はチームの士気に影響する。下を向くわけにはいかなかった。

 今夏のチームは下級生主体で、この日の3年生の先発出場は3人のみ。高いレベルの選手が集まり、ベンチに入れなかった同級生も多い。それでもベンチ入りメンバーの練習を手伝うなど支えてくれた。

 今大会の選手宣誓で紫垣主将は「支えてくれた人たちへの感謝」を述べた。同級生たちのことも頭にあった。

 甲子園に連れて行くことでの恩返しはかなわなかったが、力いっぱいのプレーで思いに報いた。(吉田啓)