(23日、第106回全国高校野球選手権岡山大会準々決勝 岡山学芸館4―2玉野光南) 「足が速いんだから、使いなさい」。玉野光南の中村飛翔(つばさ)(3年)は、小学4年で野球を始めたときからずっと言われてきた。163センチ、64キロだが、50…

(23日、第106回全国高校野球選手権岡山大会準々決勝 岡山学芸館4―2玉野光南)

 「足が速いんだから、使いなさい」。玉野光南の中村飛翔(つばさ)(3年)は、小学4年で野球を始めたときからずっと言われてきた。163センチ、64キロだが、50メートル走は6秒1。「走塁は足の速さだけでなく、判断と思い切りのよさが大事」。光南の1番打者は、プレーで信条を示した。

 同点の三回2死。二塁走者の中村は、4番・牧野卓人(3年)のゴロで、全速力で三塁を回った。「打った瞬間からホームへ行くつもりでした」。左の強打者である牧野に備え、二塁手が一、二塁間を詰めたのは確認済み。打球は逆のセンター方向へ飛んだから、追いつくにも一塁送球にも時間がかかるはず。

 牧野は送球より一瞬早く一塁を駆け抜け、中村は転送が届く前に頭から本塁に突っ込み、勝ち越した。田野昌平監督は「素晴らしいヘッドスライディング。常に全力で前の塁を狙う姿勢があった」とたたえた。

 2点を追う九回は2死で打席に立った。凡打と自分では思ったが全力で走ると、打球は抜けた。二塁に到達。だが、続く打者が遊ゴロに倒れ、中村は三塁の手前で足を緩めた。「田野先生を甲子園へ連れて行きたかった」

 監督からは、大学や社会人で野球を続けるよう勧められている。中村は「引き出しがたくさんある選手になりたい」と目線を上げた。(大野宏)