(23日、第106回全国高校野球選手権和歌山大会3回戦 日高5―1日高中津) 日高の15番、市木大将(たいしょう)選手(1年)がベンチからマウンドを見つめる。視線の先には、日高中津の主戦で、兄の市木栄勇(えいゆう)投手(3年)。 日高中津…

 (23日、第106回全国高校野球選手権和歌山大会3回戦 日高5―1日高中津)

 日高の15番、市木大将(たいしょう)選手(1年)がベンチからマウンドを見つめる。視線の先には、日高中津の主戦で、兄の市木栄勇(えいゆう)投手(3年)。

 日高中津じゃなく、日高。「兄弟校どうしで兄弟対決がしたかった」から、あえて本校に進学した。それくらい兄が好きだ。

 だが、その栄勇投手は序盤でピンチを招く。二回に押し出し四球を与えて降板、三塁手に回った。

 一進一退の試合だったが、終盤に日高のペースにのみ込まれた。本調子でなかった栄勇投手は「全部自分のせい」と振り返った。

 大将選手にとって、いつも「えいゆう」と呼んでいる兄はあこがれの存在だ。目の前で三塁ゴロをきれいにさばき、打席では左前にクリーンヒット。塁上に立つ「えいゆう」を前に、大将選手はベンチから大声で守備位置の変更を伝えた。

 大将選手も途中から、「えいゆう」がいた三塁を守った。「いつか、兄みたいに守備がうまくなりたい」

 兄は去り、自分は勝ち進んだ。「えいゆう」の分まで、次の試合も張り切る。(寺沢尚晃)