(23日、第106回全国高校野球選手権和歌山大会3回戦 智弁和歌山7―0和歌山南陵) 優勝候補の智弁和歌山を相手に、7点のリードを許して迎えた六回表。和歌山南陵の捕手、渡辺蓮主将(3年)は白い歯を見せ、笑顔で打席に入った。2球目を振り抜い…

 (23日、第106回全国高校野球選手権和歌山大会3回戦 智弁和歌山7―0和歌山南陵)

 優勝候補の智弁和歌山を相手に、7点のリードを許して迎えた六回表。和歌山南陵の捕手、渡辺蓮主将(3年)は白い歯を見せ、笑顔で打席に入った。2球目を振り抜いたが投ゴロ。続く打線も点を返せなかった。

 笑顔でいることは、小学生の頃からの両親の教えだ。「打倒智弁」を胸に大阪府堺市から和歌山南陵の野球部に。だが、学校法人の経営難により生徒募集が停止され、入部当初、50人ほどいた部員は3年生10人のみになった。渡辺主将は「笑顔で最後までやろう」と仲間に伝え続けてきた。だからこそ、点差のついた打席でも笑顔を忘れなかった。

 六回裏、バッテリーを組む松下光輝投手(3年)が、球速140キロ超の直球を連発した。渡辺主将は気持ちに応えたいという一心で、笑顔で「全力で来い」と声をかけた。相手走者は三塁まで進んだが、無失点で切り抜けた。

 たった10人で16強まで進んだ和歌山南陵は七回コールドで敗れた。SNSで話題になった新しい校歌を、再び勝って球場に響かせることはできなかった。

 渡辺主将は応援席に向かってあいさつした後、ベンチ前でしゃがみこみ、手で目頭を押さえた。それでも、球場の外に出ると、笑顔で仲間一人ずつに「ありがとう」と感謝を伝えた。(周毅愷)