(22日、第106回全国高校野球選手権北北海道大会準決勝 クラーク国際9-1旭川実) 九回、エースに試練が訪れた。先頭打者にストレートの四球を与え、次打者の内野ゴロが送球エラーに。続く4番に直球を痛打され、同点。旭川実・田中稜真投手(3年)…

(22日、第106回全国高校野球選手権北北海道大会準決勝 クラーク国際9-1旭川実)

 九回、エースに試練が訪れた。先頭打者にストレートの四球を与え、次打者の内野ゴロが送球エラーに。続く4番に直球を痛打され、同点。旭川実・田中稜真投手(3年)の表情がこわばった。

 この回の投球練習中に両足がつり、治療を受けた。「興奮していて気づいていなかった。足が重かった」。こだわりを持って磨いてきた直球を打たれた。

 三つ上の兄、楓基さんも旭川実のエースで、育成ドラフトで千葉ロッテへ。兄が立てなかった甲子園のマウンドに立ち、自分もプロになる――。入学当初から決めていた。

 アスリートの食事について学び、体作りを意識してきた。春の道大会で151キロを計測した際、「スピードではない。ピンチで空振りが取れる直球が理想」と話していた。

 プロ4球団のスカウトが視察したこの日。「最後のひと伸びが違う」。相手のクラーク国際・佐々木啓司監督に言わしめた。「球威は最後まで落ちなかった。直球の質は少しずつよくなっている。でも、まだまだ」と田中投手。9回まで13奪三振と圧倒したが、延長10回、押し出し四球や連続適時打を浴び、マウンドを降りた。

 「力を出し切れた。でもチームメートに申し訳ない気持ちでいっぱい」。エースとして主将として、決勝進出を目前に守れなかった1点を悔やんだ。(古源盛一)