(22日、第106回全国高校野球選手権埼玉大会5回戦 山村学園6―3聖望学園) 山村学園の西川歩は最後の打者に力強く投げ込んだ。得意の直球を、外角へ。狙った三振は取れなかったが、力のない打球が上がる。左翼手のグラブに球が収まると、感情を爆…

 (22日、第106回全国高校野球選手権埼玉大会5回戦 山村学園6―3聖望学園)

 山村学園の西川歩は最後の打者に力強く投げ込んだ。得意の直球を、外角へ。狙った三振は取れなかったが、力のない打球が上がる。左翼手のグラブに球が収まると、感情を爆発させた。

 「本当に勝ちたいって思いが、こういう投球になった」

 一回1死二、三塁から三回1死まで6者連続三振を記録した。「今回は三振に全くこだわってなかった」と言う通り、連続三振にすら気付いていなかったが、四回まで毎回の10個三振を奪った。

 だが、「四回ぐらいで、本当、疲れちゃって……」。三回に四球や失策が絡んで3失点したこともあり、球数がかさんでいた。

 ここで、「これじゃ多分後半持たないな」と冷静に分析した。プルヒッターが多い聖望学園への対策で、外角を狙った直球が、内角に入ったこともわかっていた。

 軌道修正し、五回以降は外角をうまく使って打ち取るスタイルに変えた。力みがなくなったことで「ゾーンに入ったのかわからないですけど、体も軽くなった」。

 100球を超えても、伸びのある球は変わらず、12三振を奪って140球で完投した。

 1年春からベンチ入りし、2年夏から背番号「1」を背負う。それだけ信頼の厚い左腕だが、「心が成長したのは2年の秋が終わった後」と岡野泰崇監督は振り返る。

 昨年10月下旬にあった監督との進路面談。西川は「プロに行きたいです」とはっきりと告げた。

 監督からは「もし本当にプロに行くのであれば、来年の今頃は野球でお金もらう人になる。『走れ』『練習しろ』だの、もう一切言わない。自分で頑張ってやれ」と言われた。

 そこから迷いがなくなった。

 自分に何が一番足りないか。考えた結果が「食トレ」だった。体重を増やそうと、母に頼んで間食用に毎日10個のおにぎりを作ってもらい、授業の休み時間の度に2個ずつ食べた。無理やり水で流し込む時もあった。

 部活中も1合食べ、帰宅後の夕食をはさみ、お風呂に入ったあとも食べた。「一気に食べられないタイプ。こまめに食べようと意識した」。昨秋に171センチ68キロだった体は、今は75キロに。球速も5キロアップし、146キロになった。

 学校のある埼玉県川越市出身。地元から甲子園に行きたいと入学した。その夢まであと3勝。「三つとか自分は考えたくなくて……。目の前の1勝を、絶対勝ち取る気持ちです」。力強く宣言した。=県営大宮(大坂尚子)