(22日、第106回全国高校野球選手権青森大会決勝 青森山田4―3弘前学院聖愛) ベンチから涙声が聞こえてくる。勝った側の青森山田の選手たちが、顔をぐちゃぐちゃにして抱き合っていた。 「本当に運が良かった」。主将で捕手の橋場公祐(3年)はそ…

(22日、第106回全国高校野球選手権青森大会決勝 青森山田4―3弘前学院聖愛)

 ベンチから涙声が聞こえてくる。勝った側の青森山田の選手たちが、顔をぐちゃぐちゃにして抱き合っていた。

 「本当に運が良かった」。主将で捕手の橋場公祐(3年)はそう振り返る。

 命運をわけたのは、2点リードで迎えた九回の守りだ。

 2死一、三塁のピンチ。マウンドには152キロを記録するなど、二回から力投を続けていた関浩一郎(3年)。甘く入った決め球のスライダーを、相手の4番打者は見逃してくれなかった。

 痛烈な打球が、左翼線を破った。

 「同点を覚悟した」と橋場。三塁走者に続き、一塁走者も本塁にかえってきた――。

 と、思いきや、審判が両手を上げた。左翼フェンスの隙間にボールが入り、エンタイトル二塁打の判定になったのだ。2人目の生還は認められず、試合は青森山田が1点リード、2死二、三塁で再開された。

 なおも一打逆転のピンチには変わらないが、橋場は「きょうの関のストレートなら、打たれない」。2球で追い込む。遊び球はいらない。高めへの143キロで、空振り三振に切ってとった。

 今夏の青森大会は、例年以上の混戦になった。有力校の実力が高いレベルで拮抗(きっこう)するなか、青森山田はライバルたちを次々に破った。

 準々決勝で昨夏王者の八戸学院光星を6―1で退けると、準決勝ではプロ注目左腕の金渕光希を擁する八戸工大一を15―0の五回コールドで下す。そして、この決勝は春の東北大会準優勝の弘前学院聖愛との接戦を制した。

 2017年以来、甲子園出場がなかったチームにあって、8強入りした選抜に続いて切符をつかんだ。橋場ら中学硬式の「青森山田リトルシニア」で全国制覇を達成したメンバーが多く進学し、OBの兜森崇朗監督も「戦力としては充実している」と自信を持つ。

 橋場は「〝激戦区〟の青森から甲子園に出られることに喜びと責任を感じる」。ライバルたちの思いも背負って、青森県勢初の日本一に挑む。=はるか夢(大宮慎次朗)