(22日、第106回全国高校野球選手権大阪大会4回戦 桜宮5―2精華) 六回表、味方の失策で1点を失い、なおも2死一、三塁。場内アナウンスが投手交代を告げる。精華のエース上野剛志(つよし)投手(3年)は三塁から泥だらけのユニホームでマウン…

 (22日、第106回全国高校野球選手権大阪大会4回戦 桜宮5―2精華)

 六回表、味方の失策で1点を失い、なおも2死一、三塁。場内アナウンスが投手交代を告げる。精華のエース上野剛志(つよし)投手(3年)は三塁から泥だらけのユニホームでマウンドに上がった。

 ちらっと一塁側を振り向き、セットポジションにつく――。思いっきり腕を振り、一塁走者を牽制(けんせい)でアウトにした。

 ベンチに戻り、それまでマウンドを守っていた矢ノ下悠太投手(2年)に「大丈夫やぞ、すぐに追いつけるから」。矢ノ下投手の硬かった表情が笑顔に変わった。

 チーム初の8強入りした春季府大会で、上野投手は背番号1で全登板でクローザーを務めた。最速138キロ、4種の変化球を操れるが、守備力を買われ内野を守り、ピンチになると登板する。

 春の準々決勝は三塁手として出場し、3失策。チームは逆転負けした。

 球場を出ても涙が止まらなかった。

 「もう僕のせいで負けない、僕がチームを勝たせたい」。他の内野手との連携や声かけを何度も練習し、捕る、投げるの動作を一から見直した。

 成果は出た。この日は無失策に加え、登板後の七回表無死一塁のピンチは自らの好守備で併殺に取ってしのいだ。

 一回から走攻守で躍動し、体力は限界だった。でも仲間が「絶対おさえるぞ」とずっと声をかけてくれた。力を振り絞って最後の打者から空振り三振を奪い、終盤3回を無失点で切り抜けた。

 チームは相手の好守に阻まれ、敗れた。上野投手はタオルに顔をうずめて、何度もおえつした。

 夏が始まる前から、野球は高校で終わりにしようと決めていた。「みんなともう練習できないことは悔しいけど、自分の力は出し切れた」。最後は笑って集合写真に納まった。(西晃奈)