パリから世界に羽ばたく若武者たち(2)U-23日本代表MF山本理仁インタビュー(前編) オリンピックにおける、サッカー男子と他競技の最大の違いは「年齢制限がある」という点だ。参加資格はU-23(今回で言えば2001年1月1日以降生まれ)に限…

パリから世界に羽ばたく若武者たち(2)
U-23日本代表MF
山本理仁インタビュー(前編)

 オリンピックにおける、サッカー男子と他競技の最大の違いは「年齢制限がある」という点だ。参加資格はU-23(今回で言えば2001年1月1日以降生まれ)に限定されるが、18人編成のうち3人だけオーバーエイジの選手を選ぶことができる。

 年齢が上で、実力のある選手が入ってくれば、同年代の選手はひと枠を失うことになる。五輪はFIFA主催大会でないため各国代表チームに拘束力はなく、該当する世代であっても招集権がない場合もある。オリンピックのサッカー種目は複雑な立場でもあるのだ。

 また、10代から世代別で構成されてきた世代別代表としては、これが最後のカテゴリー。U-24日本代表というカテゴリーは存在せず、五輪以降は全年代の選手と代表の座を争うことになる。その点においてもオリンピックは特別で、卒業式のような特別感、さみしさとともに迎える大会だ。

 U-15日本代表以降、常に代表に選ばれ続け、この世代の主力であり続けた山本理仁は、今回のパリ五輪をどのように迎えるのだろうか。

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山本理仁にパリ五輪への意気込みを聞いた

 photo by Ryokai Yoshiko

── パリ五輪メンバーの発表はヨーロッパの時間では朝7時。小久保玲央ブライアン選手と佐藤恵允選手とグループLINEをしながら会見を見ていたそうですね(「佐藤恵允インタビュー」参照)。

「そうです。みんなで電話しながら見ていました」

── メンバー入りした佐藤選手に対して「しぶといっすね」と言ったとか(笑)。

「恵允とはオフシーズン、日本でもけっこう会っていたんです。その時も恵允自身が『厳しいかな』って話をしていて。オリンピックは18人しか選ばれないし、どうなるかな......と思っていたなかで選ばれたので、『しぶといな』って言ってやりました(笑)」

── 佐藤選手の選出にSNSではアンチコメントも多かったと本人が言っていました。

「僕らからすれば、恵允が入るのは自然なことです。だって数字を見たら、恵允が(大岩ジャパンで)8点決めてて、アシストも5〜6ありますから。そう考えたら妥当だと思うんですけど......って僕がコメントすることじゃないので、言いたい人には言わせとけ、という感じですね」

【SNSのネガティブな反応をひとりで抱えるのは厳しい】

── パリ五輪の予選中も、選手がSNSで非難されるケースが散見されました。山本選手はSNSの投稿を見て苦しむこともありますか?

「僕はそんなに(精神的に)やられないタイプですね。結局(サッカーを)やっているのは俺だしって思っているので。ただ、溜め込んじゃう人もいるとは思います。だから、大会では最初の1試合目が大事。そこで批判の的になってしまうと毎試合、言われるようになるから。

 一度(ネガティブなコメントを)見てしまうと、『気にしない、気にしない』って思っても、それを考えている時点でもう気にしている。なので、しょうがないのかなと思います。だから、僕ら仲間たちがサポートしてあげないと、ひとりで抱えるのは厳しいのかなって。それができたのがアジアカップ。僕らが『おい!』っていじっていればいい話だし」


山本理仁と藤田譲瑠チマ(右)は幼少期から切磋琢磨してきた仲

 photo by Getty Images

── 西尾隆矢選手のことですね(アジアカップ初戦で退場になって3試合出場停止となり、SNSで非難する投稿があふれた)。

「そうですね。でも、隆矢はたぶん気にしないタイプだと思いますし、ある程度はこの仕事やっている以上、しょうがないことですしね」

── 現代的なテーマとして、世間でも話題になりました。

「僕を含めてほとんどの選手は、日本語でのバッシングをJリーグで経験しているので、アジアカップのような注目度の高い大会で何かを言われることはもう慣れているんですよね。でも、(佐藤)恵允と(内野)貴史が話していたんですけど、ふたりは日本でバッシングを経験せずに欧州に渡ったので、その経験値がない。欧州だとスタジアムで何か言われても(外国語だから)あまりわからないし、記事を目にする機会も少ない。だから『日本語で言われるのはきつい』という話をしていましたよ」

── メンバー発表の話に戻しますが、どのような思いで発表を見ていましたか。

「緊張していましたよ。入るだろうなとは思いつつも、こういう形(事前に知らされることにない形)でのメンバー発表は初めてだったので。周りからも『理仁はオリンピックに出るだろう』と見られているから、入ってなかったらどうしようっていう気持ちはすごくありました」

【パリ五輪は世代別代表として最後の活動】

── 無事に呼ばれたあと、誰かに報告は?

「まずは家族LINEに、僕の名前が呼ばれた瞬間、『もうとりあえず安心したわ』って送りました。家族はオリンピックに行く予定をすでに立てていたので、これで入らなかったら最悪。けっこうプレッシャーを感じていました」

── ピッチ外のプレッシャーですね。

「そうです。メンバー発表自体のプレッシャーだけじゃなくて、いろんな人が見に来てくれるというプレッシャーが強かったです」

── この世代の主力だった松木玖生選手や鈴木彩艶選手は選外でした。

「僕もびっくりでした。いろんな事情があるんでしょうけど、僕たちは今まで招集された全員のなかでの18人だと思いますので、その人たちの気持ちも背負ってやっていかなきゃいけないとすごく感じました。特に直近まで代表の活動に参加していた玖生の気持ちは察するので、僕らが結果を出さなきゃいけないなと」

── 今回の発表ではオーバーエイジの選出があるかどうかと同じくらい、同じ2001年生まれの久保建英選手がメンバー入りするかどうかも話題になりました。

「僕は世代別で2回ぐらい一緒にやっているのかな。U-17の時と東京オリンピックのトレーニングパートナーだった時と。JFA夢フィールドで会った時もちょっと話をしたりするくらいの感じです。

 個人的には一緒にやってみたかったっていうのは正直ありますね。やっぱり、ずっと昔から僕らの世代のトップランナーとしてやってきていて、今はソシエダでも代表でもバリバリやっている。その基準っていうものを知りたかったなって思います」

── 急に五輪本番だけメンバーに加わったら、驚いてしまう選手もいませんか?

「うーん、いるかもしれないですよね。僕は面識あるし大丈夫ですけど、同じポジションの選手や年下の選手は『久保建英様』みたいな感じになっちゃって、やりづらさはあるかもしれないですよね。遠慮も生まれてくるかも」

── 一番下の年齢とは4歳差ですし。

「俺は同い年なので大丈夫ですけど、誰だろう......(高井)幸大(2004年生まれ)とか? でも、彼は遠慮なんてしないですね(笑)。でも、建英とは一緒にやってみたかった。世代別代表の活動として最後でもありますし」

(つづく)

見せつけたい「逆境を跳ね返す力」

【profile】
山本理仁(やまもと・りひと)
2001年12月12日生まれ、神奈川県相模原市出身。東京ヴェルディジュニア→ジュニアユース→ユースを経て、2019年の高校2年時に飛び級でトップチームに昇格。同年5月のV・ファーレン長崎戦でJリーグデビューを果たす。2022年7月にガンバ大阪に完全移籍。2023年6月からベルギーのシント・トロイデンに期限付き移籍し、1年後に完全移籍した。U-15から各年代の日本代表に選出されている中盤の軸。ポジション=MF。身長179cm、体重73kg。