(21日、第106回全国高校野球選手権京都大会4回戦 龍谷大平安6―0立命館宇治) 2点をリードされた七回。立命館宇治のエース十川奨己(しょうき)さん(3年)は1死満塁のピンチを迎えた。 「相手に関係なく、自分のベストを出そう」 迎えた3…
(21日、第106回全国高校野球選手権京都大会4回戦 龍谷大平安6―0立命館宇治)
2点をリードされた七回。立命館宇治のエース十川奨己(しょうき)さん(3年)は1死満塁のピンチを迎えた。
「相手に関係なく、自分のベストを出そう」
迎えた3番打者を一邪飛に打ち取り、続く4番を2球で追い込んだ。3球目。2メートル近い長身から投げ下ろすフォークにバットは空を切った。
昨夏から背番号1を背負い、京都大会を制した。小学生のときからの夢だった甲子園のマウンドに立った。しかし、神村学園(鹿児島)に13安打6失点。7回途中でマウンドを降りた。
「甲子園で実力を証明する1年」と決めた。ただ、新チームになったばかりの昨秋、右ひじをけがした。甲子園を経験したエースとして注目され、結果が求められる立場だ。よけいに、苦しかった。
そんな時、支えになったのは兄の大雅さん(22)の存在だ。投手だった兄に、決め球のフォークを教えてもらった。
兄も高校時代に肩を壊した。同じ苦しみを知る兄と話すだけで、気持ちが楽になった。
チームメートの励ましも大きかった。ベンチに入れない3年生がサポートしてくれた。試合になれば、捕手で主将の中川翔さん(同)を中心に声をかけてくれた。
「支えてくれた兄や仲間のためにも勝って恩返しがしたかった」
2年連続の甲子園は遠かった。それでも、すっきりとした表情で、この日の試合を振り返った。
「高校野球人生で一番の投球でした。この仲間と野球ができて幸せでした」(木子慎太郎)