(21日、第106回全国高校野球選手権山形大会準々決勝、鶴岡東5―0東海大山形) 周囲の音が消えた。そう感じられるほど、集中していた。九回裏、1死走者なし。東海大山形の土赤龍瞳(つちあかりゅうどう)選手(3年)は代打として、初めての夏の打…

 (21日、第106回全国高校野球選手権山形大会準々決勝、鶴岡東5―0東海大山形)

 周囲の音が消えた。そう感じられるほど、集中していた。九回裏、1死走者なし。東海大山形の土赤龍瞳(つちあかりゅうどう)選手(3年)は代打として、初めての夏の打席に入った。

 相手は、鶴岡東の桜井椿稀投手(3年)。U18(18歳以下)日本代表候補の合宿に参加した大会屈指の左腕だ。

 初球、内角の変化球を迷わず振り抜いた。中前にはじき返し、チーム3本目の安打となった。

 実は、一塁コーチとして投手を見ていて「初球に変化球が多い」ことに気づいていた。仲間にも声をかけ、自らの打席に生かした。

 東根市立大富中の出身。自宅から山形市内への通学には時間がかかる。それでも、朝早く学校に行き、授業の前に打ち込む。全国から集まる仲間からも刺激を受け、切磋琢磨してきた。

 「打撃でしか、チームには貢献できない」。一打席にかける思いを一振りにぶつけた。「この仲間と野球ができて本当に楽しかった」。力強く言い切った。

 野球は高校でやめる。次の目標があるからだ。

 中学のとき、野球をしていて走者とぶつかり、頭を打った。「どんな診察をされるか不安だったとき、放射線技師の人が優しく接してくれたんです」。放射線技師になって、今度は自分が、人に安心を与えたい。(坂田達郎)