(21日、第106回全国高校野球選手権宮城大会準決勝、聖和学園9―7仙台商) 「まじか」。仙台商の郷家璃久主将(3年)は思わずそう思った。 五回表、聖和学園の4番、佐藤煌馬(こうま)選手(2年)の3ラン本塁打が飛び出し、5点差をつけられた…

 (21日、第106回全国高校野球選手権宮城大会準決勝、聖和学園9―7仙台商)

 「まじか」。仙台商の郷家璃久主将(3年)は思わずそう思った。

 五回表、聖和学園の4番、佐藤煌馬(こうま)選手(2年)の3ラン本塁打が飛び出し、5点差をつけられた場面。それでも、仙台商はすぐさま反撃に転じた。

 その裏、スタンドやベンチの声援を背中に受けた郷家主将。「みんながいる」。そう信じて向かった打席で直球を中前に運び、この試合2度目の適時打を放った。この回は打線がつながり、1点差まで詰め寄った。

 1年生の頃からベンチ入りしている選手が多い代。自分たちの代になり「試合出ている人が多かったから、大丈夫だろうな」と安心していた。しかし、強く言い過ぎてけんかになるなど、まとめるのに苦労した。

 昨秋の県大会は8強入りしたが、春は地区予選敗退。「この悔しさを絶対に忘れないようにしよう、絶対に勝とう」。毎日言い続けるうちに、チームは一つになった。

 13年ぶりの準決勝。これまで対戦したチームの分まで「絶対、俺たちが優勝するぞ」という気持ちで臨んだ。試合は一時同点に追いついたが、聖和学園の打線に一歩及ばず、敗れた。

 終了直後、うなだれる選手たちに「胸、張ろう」「ナイスゲーム」と自身も涙を流しながら励ました。「みんなでつながって、みんなが応援してくれて、自分たちの力以上が出せた試合だった」。大粒の涙を流しながら、感謝を口にした。(岸めぐみ)