(21日、第106回全国高校野球選手権栃木大会3回戦 鹿沼商工4―7茂木) 4点差を追う鹿沼商工の九回の攻撃。アウトひとつで試合終了という窮地で、この日ノーヒットだった主将の大栗渉夢(3年)が左越えの二塁打を放つ。4番の小林大斗(3年)につ…

(21日、第106回全国高校野球選手権栃木大会3回戦 鹿沼商工4―7茂木) 4点差を追う鹿沼商工の九回の攻撃。アウトひとつで試合終了という窮地で、この日ノーヒットだった主将の大栗渉夢(3年)が左越えの二塁打を放つ。4番の小林大斗(3年)につなぐ――。そう念じて振った一打で、1点を返した。

 相手は同じ県立高の茂木だ。序盤は1点のリードを守っていた。だが、四回裏に茂木の手塚大裕(3年)に三塁打を許すなどし、5点を与えてしまう。点差を縮めたいが届かない。

 そんな中、異彩を放ったのが2番打者で遊撃手の大栗だ。明るい笑顔とスタンドまで響く大声でムードを盛り上げる。六回はフェンスすれすれのファウルに走り込み、スライディングキャッチ。凡打でも一塁に全力のヘッドスライディング……。茂木の佐山浩行監督も試合後、「ハッスルプレーのショート」に用心していたことを明かした。

 そんな大栗について中村裕監督は、「気が利きすぎるくらい気が利く。そして、一人ひとりの心の動きを敏感に感じ取れる子」。元気の裏にある優しさ、繊細さを見抜いていた。

 2回戦は春の関東王者でシード校の白鷗大足利を撃破。周囲の期待が高まる中、チームに平常心を呼びかけたのも大栗らしかった。

 今年も目標のベスト8にはあと一歩届かなかった。「きっと後輩たちが成し遂げてくれる。来年の鹿沼商工は強いです」。誰よりも悔しく、泣きたいに違いない。それでも大栗は最後まで笑顔だった。(高橋淳)