(21日、第106回全国高校野球選手権東東京大会5回戦 共栄学園0―5東京) 2年連続で夏の甲子園へ――。チームに向けられるそんな期待とは別に、主将にはある思いがあった。 1年前、劇的な逆転勝利の連続で甲子園初出場をつかんだ共栄学園。その躍…

(21日、第106回全国高校野球選手権東東京大会5回戦 共栄学園0―5東京)

 2年連続で夏の甲子園へ――。チームに向けられるそんな期待とは別に、主将にはある思いがあった。

 1年前、劇的な逆転勝利の連続で甲子園初出場をつかんだ共栄学園。その躍進は「ミラクル共栄」と呼ばれた。

 初切符をつかんだ決勝の舞台、九回裏だった。二塁手後方への飛球が太陽と重なり、右翼手の顔面に直撃する。たんかで運ばれ、歓喜の瞬間をグラウンドで味わえなかった。

 右翼手は右ほおを骨折した。甲子園で躍動する仲間の姿を自宅のテレビで見届けた。「本当はあそこにいたはずなのに」。うれしかったけど、悔しかった。

 あれから1年。「悲運」の右翼手は、おごることなく、ひたむきにチームの実力と向き合った。部員による投票で主将にも選ばれた。

 「自分たちの実力は甲子園に出場した代とは違う。前の代を気にせずに、目の前の試合をひとつずつ勝ち上がろう」

 今大会は初戦から毎試合安打を放ち、ノーシードからチームを16強まで導いた。ただ、この日はプロ注目の東京のエース、永見光太郎投手(3年)を打ち崩すことができなかった。

 共栄学園の主将、高橋祐稀(よしき)(3年)の胸には、ずっと今でも心に残る言葉がある。昨年、甲子園から帰ってきた仲間たちにかけられた声。「自分たちと甲子園にもう一度行こう」だ。

 再びミラクルを起こすことはできなかった。試合後、「春よりも成長した姿を見せられた」と言った後、主将の本音がこぼれた。「やりきったけど、やっぱり悔しいです」=大田(佐野楓)