(21日、第106回全国高校野球選手権大阪大会4回戦 大商大4―3興国) 1―2で迎えた七回表1死二、三塁。このチャンスに興国の3番打者、福原優仁(ゆうと)三塁手(3年)はバットを見つめてから打席に入った。ここまで3打席で無安打。前の打席…

 (21日、第106回全国高校野球選手権大阪大会4回戦 大商大4―3興国)

 1―2で迎えた七回表1死二、三塁。このチャンスに興国の3番打者、福原優仁(ゆうと)三塁手(3年)はバットを見つめてから打席に入った。ここまで3打席で無安打。前の打席は併殺打だった。

 みんながまたチャンスをつくってくれた。「どんな球も打つ」と強振した。

 打球はライト前へ。同点の走者がかえった。

 神戸市出身の福原選手は、「少しでも長く自主練習がしたい」と寮暮らしを選んだ。

 朝食の前に1時間、登校する前に1時間と、朝練だけで汗びっしょり。寮に帰ってからも、点呼前に1時間弱練習する。

 メニューは「自分に足りないと感じた全て」。ダッシュなどの基礎練習から、校庭での打ち込み、寮暮らしの仲間を誘ってのノックの打ち合いなどと様々だ。

 「やらないと気持ち悪い」と感じるほど習慣になり、気付けば2年以上が経っていた。野球が好きだったし、「今の努力で満足したら終わりや」と言い聞かせてきた。

 いつしか仲間から「鉄人」という呼び名が付いた。

 試合で思うような結果が残せなくても、喜多(きた)隆志監督は「やってきたことを信じて、思いっきりやるだけやぞ」と言い続けてくれた。大事な場面での同点打で、「努力はちゃんと結果に出るんやな」と実感できた。

 七回の攻撃はさらに続き、逆転に成功。しかし最後、逆転サヨナラ負けを喫した。

 球場を出てみんながうずくまるなか、「鉄人」は直立姿勢を崩さなかった。「野球をやめるその日まで、今日のことは忘れない。もっともっとうまくなりたい」と涙しながら。(西晃奈)