パリ五輪を目前にして代表チームを辞退することになった宮田。(C)Getty Images“代表はく奪”に「19歳に対して厳しすぎる」という意見も パリ五輪を目前にした“異例の決定”に世間の意見は大きく割れた。 日本体操協会は7月19…

パリ五輪を目前にして代表チームを辞退することになった宮田。(C)Getty Images

“代表はく奪”に「19歳に対して厳しすぎる」という意見も

 パリ五輪を目前にした“異例の決定”に世間の意見は大きく割れた。

 日本体操協会は7月19日に都内で緊急記者会見を実施してパリ五輪女子代表の主将でもあった宮田笙子(19=順大)が喫煙と飲酒行為により代表を辞退したことを発表。同日には、日本オリンピック委員会(JOC)も協会からの推薦取り消しの申請を受理し、承認した。

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 まさに前代未聞の事態となった。パリ五輪開幕を目前に控え、モナコでの事前合宿に参加していた宮田。内部からの情報提供により行動に違反があったとしてチームを離脱。帰国後に聞き取り調査をした結果、プライベートで都内某所での喫煙が1度、また同時期にナショナルトレーニングセンターにある選手宿舎内で飲酒があったと発覚した。

 騒動が公になった直後、世間では“代表はく奪”という決定に「19歳に対して厳しすぎる」という意見も相次いだ。たしかに20歳前の飲酒、喫煙行為は法令違反ではあるものの、緊急会見で憔悴しているという本人の状態が明るみになると、精神的に未成熟なティーンエージャーに対する決定が正しいものなのかを問う識者も少なくなかった。

 実際、五輪を目前にした状況を考えても厳しいのはたしかだ。最終的に合意の上での辞退とはいえ、他の競技団体では同様のケースにおいて厳重注意、口頭での注意などの処分で済む場合もある。

 ではなぜ、今回のケースは国際的な波紋を呼ぶ決定が下されたのか。そこには体操が“日本の誇るお家芸”であるがゆえの事情があるのかもしれない。宮田が「違反した」とされた体操協会の「日本代表選手・役員の行動規範」には、こう記してある。

「『体操ニッポン』という称号は長い栄光の歴史の中で、先人たちの競技成績だけでなく行動により培われたものである。一部の選手や役員の行動により、先人たちが築き上げた栄光の歴史を汚す行為は決して許されない」

 さらに「基本方針」として「日本代表選手・役員は日本国民を代表するにふさわしく、礼儀と規律を遵守し、社会の模範となるべき選手・役員であること」と強調している同協会は、喫煙と飲酒についても「日本代表チームとしての活動の場所においては、20歳以上であっても原則的に禁止する」と明示している。

反発も覚悟で「行動規範」を遵守

 飲酒、そして喫煙を、法令でも認められている20歳を超えてまで原則禁止としている競技団体は他にはない。この事実を考えても宮田の処遇を巡って同協会が判断を下したのは、「栄光の歴史」が重視された行動規範を重んじた形と言えよう。

 19歳という年齢を考えれば、精神的には未成熟。周囲から「メダル獲得を期待される」という重圧が精神的な負担になっていたのは想像に難くない。実際、宮田が所属する順天堂大の原田睦巳監督も19日の会見で「キャプテンとして日本代表を引っ張っていかなければいけない、結果を残さなければいけない、という思いのもとで日々努力し、プレッシャーとも戦いながら苦しんでいる姿を間近で見てきた。そこはご理解していただければ」と涙ながらに当人を慮っていた。

 おそらく反発も覚悟の上で「行動規範」を遵守した体操協会。彼らは宮田の今後のキャリアについて、どうケアしていくのか。世界でも認められる実力者に“再起”の道が作られるかどうかは大いに興味深いところだ。

[文/構成:ココカラネクスト編集部]

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