(20、21日 第106回全国高校野球選手権西東京大会5回戦 日本学園1―6早稲田実) 2球目のサインは変化球だった。 「違う。これで打たれたら後悔する」 日本学園の古川遼(3年)はマウンド上で首を振った。 継続試合となる前の八回裏。受ける…

(20、21日 第106回全国高校野球選手権西東京大会5回戦 日本学園1―6早稲田実)

 2球目のサインは変化球だった。

 「違う。これで打たれたら後悔する」

 日本学園の古川遼(3年)はマウンド上で首を振った。

 継続試合となる前の八回裏。受ける捕手の田中慶至(3年)は驚いた。これまで古川に首を振られたことはほとんどなかったから。「勝負させてあげよう」。エースの気迫に応え、ど真ん中にミットを構えた。

 相手は、昨夏も対戦した早稲田実。1年前の古川は三回までに3失点を喫して、「自分のせいで負けた」。最後の夏、リベンジのマウンドだった。昨秋は最速138キロだった直球は、今年に入って144キロをマークし、身長190センチの右腕は好投手として注目を集めるようになった。

 この試合は七回から5者連続で三振を奪い、打席に強打者を迎えていた。悔いを残さぬよう投げ込んだ2球目はもちろん、磨いてきた直球だった。しかし、芯でとらえられ、打球は左翼のフェンスを越えていった。

 それでも高橋裕輔監督は試合後に言った。

 「今夏は早稲田実に通用した」

 エースの真剣勝負は、成長の証しだった。

=スリーボンド八王子(西田有里)