「阪神0-1広島」(20日、甲子園球場) 惜敗の中でも価値ある好投だった。今季2度目の先発となった阪神・及川雅貴投手(23)が6回3安打無失点の好投。だが、援護がないまま降板し、チームは延長十一回に決勝点を奪われ、4連敗で勝率5割に逆戻り…

 「阪神0-1広島」(20日、甲子園球場)

 惜敗の中でも価値ある好投だった。今季2度目の先発となった阪神・及川雅貴投手(23)が6回3安打無失点の好投。だが、援護がないまま降板し、チームは延長十一回に決勝点を奪われ、4連敗で勝率5割に逆戻りとなった。21日は前半戦ラストゲーム。後半戦につながる戦いが見たい。

 球数もイニング数も1軍では未知の領域に達した。及川が最後の力を振り絞り、思い切って腕を振る。六回2死二塁。小園を二ゴロに抑えると、小さくほえて、グラブをパンッとたたいた。「そこ(先発としての仕事)は果たせたかなと思います」。スタンドからの万雷の拍手が大仕事ぶりを表していた。

 5月24日の巨人戦(甲子園)以来の先発。4日前に言われたばかりだった。緊急ではあるが、絶好のチャンス。とにかくやるしかなかった。初回は2死から連打でピンチを招いたが、上本をスライダーで空振り三振。「ゼロで抑えられたのは、自分にとってもチームにとっても良かった」。一気に緊張が解けた。

 二回以降は表情からも自信がみなぎった。五回まで1四球こそ与えたが無安打。久しぶりの長いイニングで五回は明らかに球速が落ちたが、六回は立て直した。「意外と大丈夫でした。意外と」。暑さにも負けず、自己最長の6回を3安打無失点。自己最多87球の熱投が成長の証しだった。

 前回先発は五回途中で左中指のマメがつぶれてしまい、消化不良での降板。相手先発の戸郷にはノーヒットノーランを見せつけられた。寮に帰っても、アドレナリンとプロで一番の悔しさから眠れず。もう道半ばでマウンドを降りたくなかった。先輩から助言を仰ぎ、マメをライターであぶって固くするなど工夫。この日も試合後にはテーピングを巻いて、入念にケアをした。

 好投も打線の援護には恵まれず、先発初勝利はお預け。「そこは、しょうがない。自分がこのまま抑えていけたら巡ってくるものだと思っているので」。岡田監督は「ピッチャーは頑張ってるやんか」と評価。後半戦も先発を任される時が来るはずだ。

 前半戦の最終カードで存在感を示した、期待の若虎。課題はあるが、登板ごとに成長している。「次回もチャンスをもらえるなら、意識することはできる」。次は中盤以降も出力を保てるとアピール。もう、チャンスを手放さない。強力な先発ローテに新風を吹かせる。