(20日、第106回全国高校野球選手権南北海道大会準決勝 立命館慶祥6―3札幌光星) 八回、札幌地区大会からひとりで投げ抜いてきた札幌光星のエース粕谷脩真投手(3年)がマウンドを降りた。 初めてのエスコンに、序盤から制球が定まらなかった。…

 (20日、第106回全国高校野球選手権南北海道大会準決勝 立命館慶祥6―3札幌光星)

 八回、札幌地区大会からひとりで投げ抜いてきた札幌光星のエース粕谷脩真投手(3年)がマウンドを降りた。

 初めてのエスコンに、序盤から制球が定まらなかった。湿度が高く、手汗が止まらなかった。八回は先頭打者を歩かせ、一塁線への犠打を悪送球。その後、満塁とされ、同点犠飛と死球を与えた。

 「ここまで投げ抜いてきて、こういう場面も乗り越えてきたのに」。6試合目、47イニング目で交代を告げられた。

 エース候補だったが、結果を出せなかった。2年の冬、監督の勧めで、上手投げからサイドスローに変えた。抵抗感があった。球速は132キロまで落ち、投手陣で4番手まで落ちた。ただ、くさらず、地道に走り込んだ。

 果たしたい約束があった。「一緒にバッテリーを組もう」。1学年下の福本悠斗捕手が自分を頼って、チームメートになってくれた。

 「自分が言ったからには1番を取らないと」。試行錯誤を重ね、フォームをスリークオーターにして挑んだ春、円山のマウンドで141キロをたたき出した。指先の感覚をつかんだ感じがした。この夏、チェンジアップも武器に、不動のエースに駆け上がった。

 「夏までつらい経験ばかりしてきたけど、最後、福本に投げられて、野球が楽しいと思えた」。挫折を乗り越え、二人三脚でめざした甲子園初出場の夢を後輩に託した。(鈴木優香)