(20日、第106回全国高校野球選手権奈良大会3回戦、高田商9―3香芝) 香芝の1番打者・杉浦隼人(3年)は一回表、打席に入ると眼鏡の奥からマウンドをぐっと見据えた。相手は初戦でノーヒットノーランを達成した高田商のエース仲井颯太(3年)。立…

(20日、第106回全国高校野球選手権奈良大会3回戦、高田商9―3香芝)

 香芝の1番打者・杉浦隼人(3年)は一回表、打席に入ると眼鏡の奥からマウンドをぐっと見据えた。相手は初戦でノーヒットノーランを達成した高田商のエース仲井颯太(3年)。立ち上がりをたたいて、流れを持ってきたい。

 初球。甘くは入ってきた変化球を中前にはじき返した。「いけるぞ」。一塁上でベンチに向かってガッツポーズした。

 この日、香芝は大田俊介監督の「初球から強く振ろう」という指示通り、早いカウントからどんどん振っていった。

 二回には東陽汰(3年)の左前安打などで好機を作り、津岡京助(3年)のスクイズなどで3点を先取した。

 だが、その裏に1点を返されると、三回には逆転され、だんだんと押される場面が増えていった。

 遊撃手の杉浦は「大丈夫、落ち着いて」と何度も投手に声をかけた。三回裏1死二、三塁のピンチの場面では、遊ゴロをさばくとすぐさまホームに送球し、失点を防いだ。七回裏2死二塁の時も後方に飛んだ難しいフライを好捕した。

 打撃では、徐々に調子をあげてきた仲井に、連打が出なくなった。杉浦も2打席目以降は押さえ込まれた。

 最後まであきらめたくない。九回、そう思って次打者席でスタンバイしていたが、杉浦の前で試合が終了。香芝の2013年以来の奈良大会8強入りは果たせなかった。

 「後半から高田商に流れを変えられてしまった」。そう落ち込む杉浦を、大田監督は「まさかほんまに初球を打ってくれるとは思わなかった。声も出して周りをよく見て頑張ってくれた」とたたえた。(佐藤道隆)