(20日、第106回全国高校野球選手権山口大会 豊浦6―4早鞆) 「決まった」。2点を追う八回。早鞆の先頭打者、桑野颯大(そうた)選手(2年)は意表を突いてバントを試みた。打球が転がる間に一塁へ頭から滑り込み、内野安打に。1番の岡本光希主…

 (20日、第106回全国高校野球選手権山口大会 豊浦6―4早鞆)

 「決まった」。2点を追う八回。早鞆の先頭打者、桑野颯大(そうた)選手(2年)は意表を突いてバントを試みた。打球が転がる間に一塁へ頭から滑り込み、内野安打に。1番の岡本光希主将(3年)につなぐと、二塁への盗塁も決めた。

 だが、ここで計算外のことが起きた。打者の動作が守備妨害と判断され、岡本主将はアウトに。自らも再び一塁へと戻されてしまった。

 「このままではキャプテンが責任を感じてしまう。もう一度スタートを切ってチャンスメイクしよう」。2度目の盗塁も鮮やかに決め、3連続長短打で一気に逆転した。

 福岡県出身。早鞆へは大越基(もとい)監督を慕って進学した。

 仙台育英(宮城)のエースとして夏の甲子園で準優勝し、福岡ダイエー(現ソフトバンク)ホークスで活躍した監督は熱血指導で知られていた。「僕も受けてみたい」。親元を離れ、寮生活が始まった。

 「きつくて、つらくて。すぐに家に帰りたくなった」と振り返る。それでも食らいついて2年生で先発の座をつかんだ。

 大越さんはこの夏で監督を退任する。花道を飾る大会にしたかった。死力を尽くして巻き返した。だが延長十回、力尽きた。「悔しくて悔しくて……」

 ただ、大越さんは学校を去るわけではない。保健体育の教員として、野球部の副部長としてこれからも一緒だ。

 「大越先生はチームの一員。来夏こそ、絶対に甲子園へ連れて行く」(三沢敦)