(20日、第106回全国高校野球選手権三重大会2回戦、白子1―7神村学園伊賀) 相手ベンチがざわめいた。三回裏2死の白子の守り。迎えた相手は右の好打者・小池峻平選手(3年)。それまで上手で投げていた森川惺司(さとし)投手(3年)が、いきなり…

(20日、第106回全国高校野球選手権三重大会2回戦、白子1―7神村学園伊賀)

 相手ベンチがざわめいた。三回裏2死の白子の守り。迎えた相手は右の好打者・小池峻平選手(3年)。それまで上手で投げていた森川惺司(さとし)投手(3年)が、いきなり下手投げに変わった。ストレートの四球に終わったが、この回は0点で抑えた。

 白子は四回の守備でも秘策を講じた。プロ注目の左の強打者・寺井広大選手(3年)に対し、二塁手と三塁手が後ろに下がり、5人で外野を守る「寺井シフト」をしいた。打球は通常なら左中間を破りそうな当たりだったが、中堅寄りに守っていた左翼手のグラブにノーバウンドでおさまった。

 7日の1回戦で5年ぶりの初戦突破を果たした白子。強打を誇る神村学園伊賀に「まともに戦っては勝てない」(古川敦朗監督)と考えたのが、右打者にはタイミングが取りづらい下手投げと寺井シフトだった。

 森川投手は1回戦の翌日から、1学年上で下手投げ投手だった兄の煌太さんのフォームをまねて練習した。この日は打者2人に下手で投げ、いずれも四球だったが「結果は出せなかったが、相手を攪乱(かくらん)する効果はあったと思う」。

 六回まで同点だった試合は、七回に7長短打を浴び6点を失ったが、森川投手は八回を最後まで投げきった。寺井選手との5打席の勝負は、打ち取った当たりが中堅前に落ちて二塁打となった1被安打だけ。寺井選手は「外野手5人のシフトは初めてで、戸惑った」と話した。

 白子は3年生が6人、2年生は2人しかいない。春は連合チームを組んで県大会に出たが、今夏は1年生が12人加わった。「単独チームが組めただけでもありがたいのに、強豪相手に中盤まで互角に戦えた。挑戦する大切さを知った」と森川投手。試合後も涙はなかった。(本井宏人)