(20日、第106回全国高校野球選手権神奈川大会準々決勝 向上9―6桐蔭学園) 迷いはなかった。5点を追う七回表、1点を返しなお、1死二塁で左打席に入った桐蔭学園の寺沢太智(3年)は、初球の内角寄りの直球をフルスイングした。ボールはバットの…

(20日、第106回全国高校野球選手権神奈川大会準々決勝 向上9―6桐蔭学園)

 迷いはなかった。5点を追う七回表、1点を返しなお、1死二塁で左打席に入った桐蔭学園の寺沢太智(3年)は、初球の内角寄りの直球をフルスイングした。ボールはバットの芯に当たり、一塁線を抜ける適時二塁打となった。

 自らの守備のミスが絡んで大量失点を喫した直後の打席。「とにかくほっとした」と、二塁ベース上で拳を振り上げた。

 186センチ、93キロの恵まれた体格で、広角に長打を打てる打撃力が強みだ。一方、課題は守備。入学当初は「バットで取り返せばいい」と思っていたが、強豪ひしめく神奈川大会は、守備力がないと勝ち上がれないと考えるようになった。

 居残り練習で近距離のノックを受け、捕球スキルを磨いた。次第に「守備が良ければ打撃も良くなる。守備は打撃のバロメーター」だと意識が変わっていった。

 迎えた今大会、5回戦まで無失策と順調に来ていた。この日は2本の適時打に喜び、勝負を分けた守備のミスに泣いた。試合後、目を真っ赤にして「野球を知った試合でした」とつぶやいた。(堅島敢太郎)