(20日、第106回全国高校野球選手権西東京大会5回戦 桜美林7―6八王子北) 初の8強を狙った八王子北は九回裏、絶体絶命のピンチを迎えていた。失策を機に1死一、三塁となり、申告敬遠で満塁策を取った。6-6で1点もやれない場面。八王子北のエ…

(20日、第106回全国高校野球選手権西東京大会5回戦 桜美林7―6八王子北)

 初の8強を狙った八王子北は九回裏、絶体絶命のピンチを迎えていた。失策を機に1死一、三塁となり、申告敬遠で満塁策を取った。6-6で1点もやれない場面。八王子北のエース、大平拓海(3年)は追い込んでから内角高めの直球で勝負した。相手打者が打ち返した打球はふらりと外野へ抜けた。打球の行方を見届け、大平は笑みを浮かべた。「こういう運命だったのかな」

 相手は春夏通じて甲子園10回出場、全国制覇もある強豪の桜美林。しかし、中盤までは八王子北のペースだった。

 「外寄りの球を狙おう」という内田健太郎監督の指示のもと、桜美林の投手陣を攻略した。先発の大平も外角のきわどいコースに変化球を決め、七回表を終え6―2とリードしていた。

 桜美林ベンチは追いつめられていた。大平の投球は、桜美林の津野裕幸監督の予想を上回る出来だった。津野監督は選手に「このままだと負ける」と話し、奮起を促した。

 だが、好投を続けていた大平も限界に近づいていた。七回裏2死二、三塁のピンチで、やや三塁側に転がったセーフティーバントを処理する際、下半身が踏ん張りきれず、一塁へ悪送球。1点差となり、次打者の適時打で同点を許した。3日前にあったシード校、錦城との4回戦で174球を投げた疲れが抜けず、九回も抑えきれなかった。

 試合後、桜美林相手に自責点2の力投を見せた都立のエースは胸を張った。「今までで1~2番目のピッチング」。大学でも野球を続けるつもりだ。「目標は150㌔のストレート」。涙は見せず、すがすがしく球場を後にした。=S&D昭島(中村英一郎)