(20日、第106回全国高校野球選手権西東京大会5回戦 拓大一10―9東海大菅生) 第1シードの東海大菅生の先発、宮本恭佑(3年)は四回、急にストライクが入らなくなった。 先頭の打者に右前に運ばれると、連続四球に暴投。中前安打を浴び、この回…

(20日、第106回全国高校野球選手権西東京大会5回戦 拓大一10―9東海大菅生)

 第1シードの東海大菅生の先発、宮本恭佑(3年)は四回、急にストライクが入らなくなった。

 先頭の打者に右前に運ばれると、連続四球に暴投。中前安打を浴び、この回1死も取れず降板した。救援に入った投手も悪い流れを断ち切れず、この回だけで10失点。勝敗を分ける回になった。

 父は、プロ野球・ヤクルトの元選手で、チームの臨時コーチも務める宮本慎也さん。入学時、「プロで活躍するには、3年生にも負けないくらいの実力が必要だ」と言われた。

 先輩の「糸を引いたように真っすぐなボール」に度肝を抜かれ、同級生の活躍を見て焦った。1年秋からベンチ入りしたものの出場機会は少なく、打たれれば「宮本の息子」と取り上げられた記事に、心ないコメントが並んだ。

 ただ、苦しいことが続いても「野球をやっているのは自分のため」と前を向いた。昨春、甲子園のマウンドを踏んだ。

 股関節のけがを抱えながら迎えた昨冬、柔軟性や上半身強化をはかると、直球が手元で伸びるようになった。今春、初めてエースナンバーをもらった。

 だが、春先に肋骨(ろっこつ)を折り、練習試合で投げられるようになったのは6月半ばごろから。思うように練習できず、体力作りが遅れた。

 エースとして「自分が勝たせる」と意気込んだ今大会は初戦で先発し、4回無失点。チームの士気を高めた。

 8強をかけた20日の拓大一戦も三回まで2安打無失点に抑えていた。打線も3点取り、東海大菅生ペースと思われた矢先のエースの「異変」だった。

 「四回に入る前の投球練習で『あれっ』と疲れを感じた。一番は暑さ」。盛り上がる相手の声援にものまれた。走者を背負うと不安になり、「自分の思う球が投げられなくなった」。

 八、九回、東海大菅生打線は驚異的な粘りをみせ、1点差まで詰め寄ったが、四回の10点はあまりに大きかった。

 試合終了後、宮本は「俺のせいで負けた」と涙を流し、自分を責めた。若林弘泰監督は「今思えば、宮本を三回のところで代えてもよかった。全て私の責任。宮本は大投手になると思うので、この悔しさをバネに頑張ってほしい」とかばった。

 優勝候補筆頭校のエースナンバー、有名なプロ野球選手の息子、大きなプレッシャーを背負って臨んだ最後の夏が終わった。=スリーボンド八王子(西田有里)